2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520014
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
柳澤 有吾 Nara Women's University, 文学部, 准教授 (90275454)
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Keywords | 正戦論 / 航空安全法 |
Research Abstract |
「研究実施計画」に挙げた二つの項目(「正義の戦争」および「人道的介入」)のうち、「人道的介入」については資料整理と分析に手間取り中間的総括を行うところまでもいたらなかったが、「正義の戦争」に関わるものとしてはドイツ「航空安全法」をめぐる諸問題に取り組んできた。航空安全法は9.11同時多発テロを受けて2004年に提出されたものでハイジャックされた民間航空機の撃墜権限に関わり多くの議論を巻き起こした末、憲法裁判所にまで持ち込まれた法律である。防御的な緊急避難として撃墜は正当化されるのか否かという問題は、緊急避難という形においてであれ無辜の者の殺害を認めるかどうか、その根拠として功利主義的な計算を認めるのかどうか、可罰性の問題と行為そのものの正当性の問題との連関をどのように見るのかといった点において、マイケル・ウォルツァーのいう「最高度緊急事態」およびそこにおける道徳性の弁証の問題、「汚れた手」の議論の評価と密接に関連している。2007年度はこの法律をめぐる法的・倫理的諸問題に即してウォルッァーの議論を再検討することを試みた(ただし違憲判決以降の政治状況も流動的で現在進行中の議論であるため、論文のかたちで成果を発表するのは2008年度となる)。 また研究進行中に新たに浮上してきた課題として戦争の表象をめぐる諸問題がある。戦争の正当性をその表象ないし記憶という側面から捉えなおすことも「正義の戦争」をめぐる重要な課題のひとつであり、それについてはミュンスター彫刻プロジェクトにおける作品の分析を通してアプローチを試みた。その成果の一部は「公共性とアート」と題する論文として2007年度末に刊行されている。
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