2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520064
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
イ ヨンスク Hitotsubashi University, 大学院・言語社会研究科, 教授 (00232108)
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Keywords | 日本思想史 / 言語行為 / 天皇制 |
Research Abstract |
平成19年度の研究の第一の目的は、明治以降の思想史のなかで詔勅がどのような意味を担わされていたかを明らかにすることであった。そのために二つの領域を設定した。ひとつは民俗学であり、もうひとつは憲法学である。この二つの領域は一見したところ隔たりが大きいように見えるが、天皇の詔勅が古代以来の「みこともち」の系譜の上でとらえられていたことを考えるなら、それほど唐突な結びつきではない。そのことは、大日本帝国憲法が君主である天皇の意志の発現であり、憲法の方向性を定めた天皇の「上輸」が憲法前文としての役割を果たしていることによく現れている。この「上輸」は、憲法の内部にあると同時に外部にあるという非常に曖昧な性格をもっており、この不確定性は詔勅全般にも当てはまる。二本の研究論文では、柳田国男と折口信夫の民俗学における天皇制の意味を追究した。とくに折口が天皇のことばに付与した重要性に注目した。また、学会発表では、天皇制と日本の文化的アイデンティティの関係について考察した。これらの研究成果をまとめたかたちで、2008年4月にアメリカのアトランタ市で開催されるアジア学会年次大会での研究発表を申請し、受理された。その報告では、天皇の詔勅の法的位置づけ、民俗学的意味づけ、政治文化的制度の問題などをあつかう予定である。また本年度には、これまで発表してきた文化論、政治論に関する論文を集めて、一冊の著書を上梓することができた。著書を刊行することは、これからの研究の方向性を定めることに大いに役立った。
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Research Products
(5 results)