2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520080
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 Tokyo Gakugei University, 教育学部, 准教授 (10313280)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 千晃 国立歴史民俗博物館, 歴史研究系, 外来研究員 (00413899)
|
Keywords | 舞楽 / 曼荼羅供 / 天野社 / 高野山 / 法会 / 丹生都比売神社 |
Research Abstract |
平成19年度は、昨年度に引き続き資料の調査収集を行い、収集した資料の解読分析を進めた。調査は、大曼荼羅供の現況および東京別院所蔵の古絵図がその中心をなした。大曼荼羅供は近世から伝承されている高野山の最重要法会の一で、天野社舞楽曼荼羅供は、この大曼荼羅供に神事、舞楽、雅楽曲等を重ね、会場を天野社に移して行なわれたものにほかならない。4月10日に大曼荼羅供の現況を実地で調査し、関連する映像資料や音源資料の収集を行なった。それらをもとに、江戸期の天野社舞楽曼荼羅供の式次第にしたがって、声明と雅楽の重なり具合を現行の音源で再現する実験を試みたが、必ずしも調和のとれた音響にはならなかった。当初よりこうした音響設計であったのか、雅楽と高野山声明が接点をもたなくなった百七十余年の間にズレが生じたのか、にわかに決め難く、この点が今後の大きな課題である。高野山東京別院所蔵の古絵図は、絵馬仕立で四枚からなり、それぞれに慈尊院、壇上伽藍、奥の院、天野社が描かれ、通覧することで高野山を一巡することができる構成になっている。わけても本研究にとって注目されるのは、天野宮祭礼図と題された絵図に舞楽曼荼羅供の様子が洋細に描かれていたことである。異時同図の技法で、僧侶の行列と庭讃、舞楽、神供備進、神前神楽などが描かれ、神仏習合の盛大な宗教儀礼の様子が観る者に直に伝わるようになっていた。12月19日に調査を実施し、撮影を行なった。資料の保存状況が良くなかったため、調査は文化財保存支援機構の協力、助言のもとに進めた。本絵図は昭和四十年代に同院の本堂を改築した際に倉庫に納められ、その後全く省みられなくなっていたものであるが、高野山に関する種々の伝承が随所に描き込まれており、高野山信仰の研究等にも資するところが大きいと思われる。天野社舞楽曼荼羅供を描いた絵図としても最も精緻であり、当資料の発見は今年度の最大の成果であった。
|