2008 Fiscal Year Annual Research Report
雅楽「復元」の諸相〜20世紀における「復元」研究と演奏の視座
Project/Area Number |
18520087
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
寺内 直子 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (10314452)
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Keywords | 伝統音楽 / 雅楽 / 唐楽 / 復元 / 国立劇場 |
Research Abstract |
初年度に提出した全体の研究計画で、本研究では便宜上、雅楽「復元」の研究史を、1)明治末から20世紀前半、2)1945-1970年代前半、3)1970年代後半〜1980年代、4)1990年代以降の4つの寺期に区分した。昨年は資料収集と分析により、いわゆる近代にあたる1)2)の時期と、3)4)の時期における「復元」の理念の違いを分析したが(2008年6月脱稿)、本年度はそれと関連して、「復元」の実際の技術的問題(古譜の解釈、演奏の実施など)について、国内外の研究者、実践者の事例をいくつかのレベルに分け、その実態を細かく分析した。具体的には、史料批判、史料の翻刻など書誌的な手続き、記号の解読の際の、方法論上の科学的整合性、抽出された結果の客観性、演奏に付す際の個別の楽器の演奏技法上の解釈、合奏全体としての統合性など、録音の際の条件とマスタリングの問題な、さまざまな記述を設定して、これまでの研究・演奏の実例を分析した。 資料批判、解読の学術的妥当性(あるいはその検証性)についてについて、もっとも信頼できるのは、近代以降の第二、第三世代の、福島和夫、蒲生美津子、S.ネルソン、遠藤徹、肇者などの研究である。しかし、これらの世代の研究は、特に楽譜譜字の解読の点では、記号の分布や数、出現の周期性などの統計的な手法による分析で卓越した視点を示した林謙三の研究に追うところが極めて大きい。ケンブリッジ研究グループのピッケン、マレット、ウォルパート、マーカムらや上海音楽学院の陳応時らの研究も基本的にこの延長線上にある。しかしながら、これらの研究は、音高という側面における構造、あるいは、リズムの側面における構造などを解読することには成功しているものの、実際にそれを音にする時に必要な、演奏習慣等に関する「復元」には至っていない。演奏慣習まで含めた「復元」は、資料の制約から、事実上不可能であるが、実際の音への「復元」を始めから放棄するのではなく、視野に入れて行う学術的「復元」研究が、これからは望まれるてあろう。 一方、国立劇場の一連の「復元」演奏は芝祐靖の手によっているが、これは、現代の観客に聞いて魅力的な音楽である必要があるために、古楽譜から得られた旋律の骨格にさまざまな解釈を付け加えている。しかし、よく考察すると、芝の「復元」には、1)現代の唐楽合奏風、(旋法や演奏慣習を現行のまま用いる方法)、2)平安時代の様式(旋法、楽器など、古楽譜、古楽器に基づき「復元」)など、異なる様式の手法を見せている。1)については、奈良、平安当時の「復元」とは言えないが、これらの楽曲が今日まで廃絶せずに伝わっていたら、このようになってい以上の今年度の作業に、過去二年の作業、および、関連する演奏会のプログラム、戦前の雅楽研究に関する雑誌記事のデータベースを加。
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Research Products
(2 results)