2006 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代における大衆消費社会の生成とメディアをめぐる総合研究
Project/Area Number |
18520149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
安田 孝 神戸女子大学, 文学部, 教授 (50117727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 伸彦 甲南女子大学, 文学部, 助教授 (00411843)
吉田 司雄 工学院大学, 工学部, 教授 (50296779)
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Keywords | 国文学 / 文化研究 / メディア |
Research Abstract |
公開研究会を3回開催した。第1回は、当時最新のカメラであったライカが谷崎潤一郎の「細雪」に取り込まれていることの文化史的意義を分析した報告と、複数の写真を組み合わせる「フォト・モンタージュ」を用いた雑誌『犯罪科学』の記事を分析した報告とがあった。第2回は、映画のモチーフの一つである「マッドサイエンティスト」の映像をDVDを用いて分析した報告があった。第3回は、1925年から開始されたラジオ放送の普及の経緯をたどり、ラジオをモチーフとした海野十三の小説の位相を分析した報告と、本来虚構性の強い探偵小説が1930年前後には実際に起きた事件を題材にするようになった経緯を、同時代の雑誌の実話の特集と対比しながら、その特質を分析した報告があった。 以上のような報告とそれに対する討論をとおして、次のような見解を確認した。一つは、カメラやラジオといった先端のテクノロジーに対する文学者の反応の早さである。ラジオ放送が開始されると直ぐにさまざまな雑誌が特集を組み文学者などにラジオ放送に対する意見をもとめたし、番組作りに参加する文学者もいた。もう一つは、映像を用いたイメージ操作である。「フォト・モンタージュ」を用いることで混沌とした都市の諸現象を写真として可視化すると同時に、それらを組み合わせることから生じる「物語」によって読者の好奇心を引きつけようとした。1930年代におけるハリウッド映画の「マッドサイエンティスト」は、同時代の科学がいまだ実現していない人体改造などに取り組み、科学の神秘的なイメージを生み出した。 なお、吉田と馬場は6月にパリのフランス国立東洋言語文化大学で開催された「加工/仮構される身体--ロボット・女性表象・断片の政治学」で報告を行った。
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Research Products
(1 results)