2008 Fiscal Year Annual Research Report
古典古代学を基盤とした「東方予型論」の構築と可能性をめぐる研究
Project/Area Number |
18520169
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
秋山 学 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (80231843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 佳奈子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (10302829)
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Keywords | 慈雲尊者飲光 / 四辻善成 / ビザンティン典礼 / 華厳思想 / 古典古代学 / バジリオ会 / 神仏習合 / パラクリス |
Research Abstract |
代表者が2001年以来取り組んでいる「予型論」とは元来聖書学の一理論であるが,その「予型」が旧約聖書に限られず各文化圏に見出される,とする神学を展開したのはギリシア教父たちであった.本企画では,遠く東洋日本におけるキリスト教伝来以前の文化伝承のうちに「予型」を見出し,それを照射する「光源」として東方キリスト教神学に依拠するという2段階での研究を推進してきた. (1)まず上記の意味での「予型」の研究として,代表者による論文「慈雲と華厳思想」および分担者による図書収録論文「『河海抄』の光源氏」がある.江戸後期の梵学者慈雲尊者飲光は,『梵学津梁』により不朽の光を放つとともに,雲伝神道を唱導して神仏習合の学問的可能性を示した.「華厳経」は8世紀初頭に本邦に伝えられていたが,慈雲はこの華厳経に含まれる「十善戒」を,記紀解釈の基盤としても用いた.また賜姓源氏なる光君を親王として描き出すという特質を有する『河海抄』は,注釈者四辻善成による自身の悲願を反映する.(2)一方「光源」の研究としては,代表者によるビザンティン典礼の式次第をめぐる一連の翻刻研究がある.今年度は聖体礼儀の聖バジル典礼に関して,その典文がバジル自身に遡りうるものであることから,古典古代学への有効な視座として活用されることを示した.また「聖週間」〜「光の週」という,年間で最も重要な時期に関して,その典礼の次第を翻刻しっつ,多様性を呈するこの時期の朝課を理解するうえで,パラクリスという聖母のための祈祷文をその中心に据えることの有効性を提唱した.これら日々の典礼を支える聖人伝「メノロギオン」を完訳・翻刻するとともに,具体的な修道共同体(バジリオ会)の歴史的経緯をも探ることができた. 慈雲のうちに古典古代学者を,また四辻善成のうちに実証主義的注釈家を見出す代表者・分担者の試みが,本企画を終了するに当たり「東方予型論」の基礎として据えられたと考えたい.
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Research Products
(7 results)