2007 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代アフリカ系アメリカ人文学における「ブラック・オリエンタリズム」研究
Project/Area Number |
18520170
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹谷 悦子 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (60245933)
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Keywords | アメリカ合衆国 / オリエンタリズム / アフリカ系アメリカ人 |
Research Abstract |
本研究は1930年代のアフリカ系アメリカ人文学を、環太平洋という新しい文学の地政学のなかに布置することによって、グローバルな視座から見直すことを試みるものである。とりわけ、真珠湾攻撃までの約十年間に、アフリカ系アメリカ人たちが想い描いたアジア(とりわけ日本)との超国家的連帯を歴史のなかから掘り起こし、「ブラック・オリエンタリズム」の系譜を体系的に分析することを目的とする。今年度は宗教の領域を横断しつつ、人種戦争ファンタジーに焦点をあて調査を行なった。主な分析対象としたのは、アフリカ系アメリカ人作家でジャーナリストのジョージ・スカイラーの近未来小説『黒人帝国』(Black Empire,1936-38年)および未発表原稿"Japan and the Negro"である。『黒人帝国』執筆の動機となったムッソリーニのエチオピア侵攻-第二次イタリア・エチオピア戦争-が与えた歴史的インパクトを、スカイラーが編集主幹を務めた黒人週刊紙Pittsburgh Courierから明らかにし、作品や報道に表出された人種戦争ファンタジーの源泉となっていた「日本」の特権的で特異な位置づけを解明した。また、1930年代にデトロイト・シカゴに出現した黒人イスラム運動組織ネーション・オブ・イスラム(Nation of Islam)の教義-特に黒人は"Asiatic man"であるという創造神話や"Mother Plane"(聖書のエゼキエル書のWheelにあたり、白人世界を破壊するために「日本」がつくったとされる)に関わる黙示録的な教え-を分析することで、ブラック・オリエンタリズムを組成する人種戦争ファンタジーの核として機能した「日本」の役割を明らかにした。
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Research Products
(2 results)