2006 Fiscal Year Annual Research Report
カナダ先住民文学・アジア系カナダ文学にみられる「グローカル」性の考察
Project/Area Number |
18520241
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 アヤ子 明治学院大学, 教養教育センター, 教授 (70139468)
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Keywords | グローカリズム / Roy Miki / Larissa Lai / アジア系カナダ人作家 / Hiromi Goto / Salt Fish Girl / Chorus of Mushrooms / Beverley Currn |
Research Abstract |
日系カナダ文学、アジア系カナダ文学の権威であるサイモン・フレーザー大学(バンクーバー)のRoy Miki教授を訪問して、日系・アジア系カナダ人作家の最新の文学動向に関する専門知識の提供を受け、アジア系カナダ文学に見られる「グローカル」性について意見交換をはかり、示唆を受けた。以前よりミキ教授は、グローバル化時代における文学の状況を考えるとき、グローバル化は新しい形のローカリズムを生み、中国系カナダ人作家Larissa Laiの、Salt Fish Girlにその例を見ることができると指摘してきた。グローバル化による地球規模の緊張感が高まっている今日の状況の中で、植民地の歴史の遺産である今日の不平等さを認識させ、ローカルなものとグローバルなものが非暴力の形で共存し、想像力が新たな民主的統治を作り出す文化的枠組みの形成を呼びかけるライの小説は、文学の倫理的力を具現したものとして賞賛に値する、とミキ教授は語る。昨今のグローバルなものとローカルなものが対立する中で、この「民主的統治を作り出す文化的枠組み」を探るライの手法こそ、新しい理念「グローカル」性に繋がるものと私は分析する。グローバルだけでも、ローカルだけでもない両方の視野を持って双方向に行動しようとする「グローカル」性を、Salt Fish Girlに考察した。 日系カナダ人作家Hiromi Gotoにインタビューをした。代表作であるChorus of Mushroomsで、ゴトーは主人公の「語り」に日本語を取り入れる手法を用いている。ゴトーの"narrative strategies"がグローバルとローカルなものを連結した「グローカル」性であることを指摘して、作者ゴトーの意見交換をした。 また、カナダ文学会理事の愛知淑徳大学助教授Beverley Currn氏から随時専門的知識の提供を受けた。
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