2006 Fiscal Year Annual Research Report
トマス・グレイのウェールズ古詩研究ノート--「カンブリア」考察
Project/Area Number |
18520250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
片山 麻美子 大阪経済大学, 人間科学部, 教授 (50183778)
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Keywords | 英米文学 / トマス・グレイ / ウェールズ / 古詩復活 / ケルト文化復興 / ウィリアム・メイソン / エヴァン・エヴァンス / ヘンリ・ローランズ |
Research Abstract |
当該研究ではグレイが1750年代に執筆した「カンブリア」と題する研究ノートに特化し、平成18年度はウェールズの詩法研究に関する記述を中心に、グレイの言語観と詩観を考察した。またケルト文芸復興の萌芽期における好古研究の進展状況に関して引き続き調査を進めた。 成果としては、(1)「死者を語る墓碑--グレイの「挽歌」と姉妹芸術」を日本ジョンソン協会編『十八世紀イギリス文学研究3』に所収し出版した。牧歌詩および寓意画による「挽歌」への影響を考察し、グレイが過去から未来への時間的継続性を強く意識していることを論じた。グレイはこの後精力的に詩歌の歴史研究を進めている。(2)2007年9月の関西コールリッジ研究会では、「初期ワーズワスとウィリアム・メイソン--古代の表象をめぐって」と題し、ワーズワスに対するメイソンの影響とその後の離反を検証し発表した。ワーズワスは『叙景小品』で、メイソンの『キャラクタカス』の詩文を引用し神秘的な古代人の精神を称揚する。一方、フランス革命が恐怖政治へと傾斜しゴドウィンの理性主義の影響を受けるに並行して、『ソールズベリ平原』でドルイドの迷信性と残虐性を批判する古代表象の変化が起こったことを跡付けた。(3)他に、2007年3月の関西アイルランド研究会では、「トマス・グレイとウェールズ--18世紀ブリティッシュネスー考」と題し、最近のケルト再考の議論を踏まえ、グレイの古代詩研究の背後にある歴史観と当時ウェールズに芽生えた好古研究の状況について口頭発表した。 2008年2月にはウェールズ国立大学のコンスタンティン博士と面談し、研究の進捗状況を報告し、グレイのウェールズへの視座が多文化主義的であったかどうか議論した。博士から最近の研究動向と文献の紹介を受け、大英図書館で文献収集にあたった。今年度の研究費使用は(1)大英図書館での文献資料代と渡英費(2)コンスタンティン博士への専門的知識の提供に対する謝金(3)コンピューターの購入が主なものであった。
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