2007 Fiscal Year Annual Research Report
トマス・グレイのウェールズ古詩研究ノート-「カンブリア」考察
Project/Area Number |
18520250
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
片山 麻美子 Osaka University of Economics, 人間科学部, 教授 (50183778)
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Keywords | 英米文学 / トマス・グレイ / ウェールズ / 古詩復活 / ケルト文化復興 / ウィリアム・メイソン / エヴァン・エヴァンス / ヘンリー・ローランズ |
Research Abstract |
本研究では、トマス・グレイの古詩研究が古詩の収集にとどまらず、イギリスという国家形成と詩歌の歴史を探求し、民族の起源と独自の精神性を提示する試みであったことを明らかにする。平成19年度はウェールズの詩法研究を中心に、グレイの言語観と詩観を考察した。特に国内外のケルト研究を参照し、グレイが18世紀のケルト民族意識の形成と関わったことを裏付けた。 成果として、(1)「民族とことば・・・イギリスにおける古詩復活運動と民族意識の形成」と題し、18世紀半ばの古詩復活運動とケルト民族起源論を関連させ論じた。(『人間科学研究』第2号)グレイ、メイソンの作品がウェールズのケルト民族起源論に影響を受けていた点、マクファーソンの『オシアン詩』がスコットランドの古ゲール語の詩を復活するとともに、ケルト民族起源論を(衍していたことを論じた。また新しい知見として、プリス・モーガンの伝統の創出の議論を踏まえ、ウェールズの古詩復活が、17世紀後半以降のウェールズにおける社会変化と伝統喪失の危機に起因していた点で、マクファーソンに共通することを論じた。これまでナショナリズムの視点から古詩復活を議論してきたが、本年度は、考古、歴史、文化人類学で学際的な論争となっているケルト民族起源論の研究成果を取り入れ、当時の古詩復活の担い手が民族起源に強い関心を抱き、影響を受けていたことを論じた。 2008年2月には大英図書館でケルト民族起源論を主張したフランスのペズロン、またアングルシーのドルイド描写を含むローランズの著書の閲覧を行った。さらにケンブリッジのペンブルック学寮の図書館を訪れ、グレイの備忘録とメイソン関連の文献を閲覧した。従来の文学分野にとどまらず、当時のケルトに関する第1次資料をもとに、国家・民族意識の歴史的胎動のなかにグレイの古詩復活運動を位置づけ、詩人の再評価を試みている。
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Research Products
(1 results)