2008 Fiscal Year Annual Research Report
トマス・グレイのウェールズ古詩研究ノート--「カンブリア」考察
Project/Area Number |
18520250
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
片山 麻美子 Osaka University of Economics, 人間科学部, 教授 (50183778)
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Keywords | 英米文学 / トマス・グレイ / ウェールズ / 古詩復活 / ケルト文化復興 / ウィリアム・メイソン / エヴァン・エヴァンス / ヘンリー・ローランズ |
Research Abstract |
当該研究ではグレイが1750年代に執筆した「カンブリア」と題する研究ノートに特化し、平成20年度は古代ウェールズの詩法と社会に関する記述を研究した。近年の民族学や考古学の研究成果を取り入れ、18世紀における好古研究の進展状況とケルト再発見の議論を調査し、グレイやメイソンと好古家の相互の影響関係を考察した。またこれらケルトの文芸復興を発展させ、ロマン派の時代にウェールズ独自の歴史観と伝統文化を創造したイオロ・モルガニッグの活動などを概観した。 成果として、「古代ブリテンの表象--メイソンとケルトの再発見」と題し、『キャラクタカス』におけるドルイドとバルドの描写を検討し、当時の好古的研究による影響を跡付けた論文を2008年10月にイギリス・ロマン派学会全国大会で発表した。論考はメイソンがグレイの助言を受け、古代ローマの文献のほか、ローランズなどの18世紀のケルト文献を活用していた事実を裏付けた。特にメイソンはイングランドとウェールズを民族的に区別するケルトの呼称でなく、エリザベス朝以来の伝統的ブルータスの起源説とブリティッシュという呼び名の使用にとどめている。近年のケルト学における呼称の議論(Collis, The Celts)を考慮すれば、作品はイングランドを中心とした当時の統合的な国民意識に関わる姿勢を示していて重要と考える。 2008年11月にはウェールズのコンスタンティン博士と研究の進捗状況について面談し、S. Prescottのグレイとエヴァンスに関する著作の紹介を受けた。また2009年3月にはオックスフォード大学で、ローランズとサンメスなどのケルト好古研究の文献を貴重書と電子資料で調査した。当時の第1次資料をもとに、ケルトに関する学際的な研究の成果を踏まえた論考を発表することができて有意義であった。補助金は主に英国への渡航費と文献調査に使用し、他に発表のための旅費と書籍購入に支出した。
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Research Products
(1 results)