2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520253
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
森 あおい Hiroshima Jogakuin University, 文学部, 教授 (50299286)
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Keywords | 英米文学 / ジェンダー / 多文化主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、メインストリーム社会から無視され、沈黙を強いられてきた人々の社会・文化表象を考察し、単に日本人のアメリカ文学研究者としてアメリカ文学・文化理論を「受容」するばかりでなく、日本人としての視点からアメリカ文学、ことにマイノリーティ・ディスコースについて発信できる理論を構築することにある。 平成19年度は、視覚的な媒体に投影されるアフリカ系アメリカ人のステレオタイプ化されたイメージについて、W.E.B.デュ・ボイスが関わったパリ博覧会(1900)と、トニ・モリスンが企画して開催されたルーヴル博物館での特別展(2006)を地較検討し、現代社会におけるマイノリティ・ディスコースの持つ可能性について考察した。 パリ博覧会は、19世紀の科学・産業技術の「進歩」をテーマに開催された。この博覧会で黒人展が開催され、そのための資料収集を行ったのがデュ・ボイスであった。彼は、奴隷解放後の黒人の「プログレス」を写真や統計を通して提示し、否定的な黒人のイメージを修正しようとした。その成果は博覧会でも認められ、金メダルを受賞する。しかし、アメリカのメディアは、黒人プレスを除いてこの企画をほとんど無視した。 パリ博覧会の開催から百年余りを経た2006年11月にモリスンは、アメリカ人として初めてルーヴル博物館で特別展を企画する。"Foreigner's Home"というテーマのもと開催された特別展は、抑圧された者たちの存在が芸術に記録されていることを示した。 本年度の研究を通して、マイノリティ・グループの「声」を表現するために、芸術が大きな役割を果たすことを証明した。モリスンのルーヴル博物館での特別展に関する論文はまだ発表されていないので、今年度はこのテーマをさらに発展させて、7月にサウス・カロライナ州チャールストンで開催されるトニ・モリスン学会で研究発表を行う予定である。
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