2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520253
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
森 あおい Hiroshima Jogakuin University, 文学部, 教授 (50299286)
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Keywords | 英米文学 / ジェンダー / 多文化主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、メインストリーム社会から無視され、沈黙を強いられてきた人々の社会・文化表象を考察し、グローバルな視点で、マイノリティ・ディスコースを構築することにある。 最終年度は、研究協力者であるプリンストン大学Valerie Smith教授を招聘し、黒人研究の会での基調講演等、アメリカ、日本に加えアフリカの研究者を交えた意見交換の場を持った。さらに、同教授と、グローバルな文脈で公民権運動の功績をとらえようとする最近の研究について議論を行った。その結果、アメリカでは公民権運動以降、多くの作家や批評家、音楽家、芸術家たちがこの時代の直接行動から生じた様々な芸術活動を行っており、アフリカ系アメリカ人の文化表象も多様化してきたことが明らかになった。また,公民権運動は、アメリカ合衆国に多様な価値観をもたらしたばかりでなく、世界中で人種、民族、宗教、ジェンダー、セクシュアリティ等に関する運動に大きな影響を与えてきており、これまで分断化されていたマイノリティ・グループの声を集約するための理論が、多様性を重んじる社会を構築するためには重要であることも明らかになった。 研究成果の公表のために、2008年7月24日〜26日にかけて米国サウスカロライナ州チャールストンで開催された第5回トニ・モリスン学会に出席し、"'Foreigner's Home' and Re-figuring Modernism."というタイトルで研究発表を行った。モリスンがルーヴル博物館という古今東西の芸術が所蔵されている場所で、「外国人」というマイノリティとしての立場から芸術を再評価していることを解き明かした。さらに、トニ・モリスンの長編小説『パラダイス』(1998)を西洋の近代化と植民地主義に結びつけて分析し、この作品におけるアフリカ系アメリカ人の表象を読み解いた。その成果として『トニ・モリスン「パラダイス」を読む』(彩流社)を出版した。
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Research Products
(4 results)