2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520260
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
宇戸 清治 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (30185053)
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Keywords | タイ / 映画 / ナショナリズム / 伝統文化 / フィルムアーカイブ |
Research Abstract |
本研究は、開国以来120年の歴史を有するタイ映画における王室、仏教、民族の三位一体の国体イメージに見られるナショナリズムが、立憲革命、第二次世界大戦、軍部独裁政治、1970年代中期の民主革命、1990年以降の急速な経済発展といった歴史的転換点において色濃く反映されていつ点に着目し、各時代におけるタイの社会・文化状況と映画に表象されたナショナリズムの関係を具体的作品の分析を通じて、その内的論理を解明することを目的とした。 以上の構想に基づき、平成18年度はまず本研究の基礎となる歴史的背景の理解のために、近代タイとナショナリズムの関係に言及した日本語、欧米語、隊伍の書籍、雑誌、論文等の資料を収集すると共に、分析を進めた。 次に、ナショナリズムが主要または副次的なテーマとなっているタイ映画についてのデータベースを作成し、タイ現地に置いてオリジナル映画の鑑賞、デジタル記憶媒体(映画DVD、VCDなど)の収集と分析を進めた。とくに戦前期の貴重な映画『白象王』(プラチャオ・チャーン・プアック、1941年公開)については2種類のバージョンを分析し、これが国内よりは国外に向けてタイの政治・軍事的中立政策を訴えた国策映画であることが明らかとなったのは大きな成果であった。さらに、映画『闇の天国』(サワン・ムート)の分析を通じて、戦後1950年代のピブンソーンクラーム政権とサリット政権という2つの軍事政権のタイ近代化と王制の政治利用に対するスタンスの違いが、モダニズム理解の相違に基づくものであり、両者のナショナリズム観が対極的なものであることが明らかとなった。これらは、2つの論文にまとめた。 また、1970年代中期の民主革命前後の時期の映画についてはナショナリズムの作風で知られるチュート・ソンイー監督作品の『スパンの血』の分析を通じて、これがナショナリズムを煽る目的ではなく、むしろ経済発展によって失われつつあったタイ伝統文化へのノスタルジーが根底にあることを明らかにできた。この作品についての論文を執筆する段階で、先の2代の軍事政権時代にイデオローグの役割を果たした知識人ウィチットワータカンと国民作家マイ・ムアンドゥームの作品におけるナショナリズムを比較検討することができ、これも平成18年度研究の大きな成果であった。
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Research Products
(2 results)