2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520260
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
宇戸 清治 Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 教授 (30185053)
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Keywords | タイ / 映画 / ナショナリズム / 伝統文化 / フィルムアーカイブ |
Research Abstract |
開国以来120年の歴史を有するタイ映画には、国王・仏教・民族の三位一体の国体イメージを植え付けようとするナショナリズムが、立憲革命、第二次世界大戦、軍部独裁政治、1970年中期の民主革命、1990年以降の急速な経済発展といった歴史的転換点において色濃く反映されている。本研究は、この近代タイ映画史を時代区分した上で、各時代区分におけるタイの社会・文化状況と映画に表象されたナショナリズムの関係を具体的作品の分析を通じて、その内的論理を解明するものである。 以上の研究構想に基づいて、平成19年度はまず前年度に収集した関係資料の分析を19年4月〜10月の期間、行った。特に、第二次世界大戦前のエポックメイキング的な国策映画『白象王』の2つのバージョンの詳細な比較分析を進めた。その後、戦後の軍部独裁時代に顕著になる西欧モダニズム志向の映画(例『闇の天国』、『地獄ホテル』など)を、当時の国王権力と軍部権力の関係の視座から分析した。民主革命期の映画としては、『タクシードラーバー』『田舎の教師』のような社会性の強い映画の中に表象された国王イメージの復権や仏教の捉え方を中心に分析した。1990年以降のニューウェイブ映画では『マッハ』のように国外での上映を前提に制作された映画を中心に、グローバリズムの中でのタイ的価値の表象が前面に打ち出された映画に着目して、それ以前のタイ映画とのナショナリズムの違いを比較した。 そのほかに、タイでの現地調査と研究発表を行った。平成19年7月までにまとめたドラフトの内容をタイ国立フィルム財団の研究者との研究会で発表し、意見交換を行う中で必要な追加や修正を行った。また、平成18〜19年度に収集した資料の翻訳を進めると共に、データベースを作成し、印刷物やホームページ等での公開を通じて学内・学外の利用に供している。
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Research Products
(1 results)