2008 Fiscal Year Annual Research Report
社会運動としての文学--アフリカのHIV/エイズと小説
Project/Area Number |
18520269
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大池 真知子 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (90313395)
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Keywords | 外国文学 / アフリカ / エイズ |
Research Abstract |
(1)HIV/エイズを扱ったアフリカの小説で女のセクシュアリティに焦点化した作品は、(1)少女の性を扱うヤング・アダルト小説(2)若い女の性を扱う小説(3)社会の性風俗を描く小説に大別される。本年度は(2)の例として、ウガンダの新人女性作家による純文学的な作品、(3)の例として、ガーナの中堅女性作家による大衆文学的な作品を分析し、論文にした((2)の論文は現在審査中)。前者の分析から、若い女は、異性愛主義の言説に隷属して女性主体性を構築するが、その結果エイズによる死に直面することで、かろうじて言説作用に挑戦し、性のリアルを取り戻すことが明らかになった。また後者の分析から、若い女は中年の男を相手に性と金を交換し、みずからの性を商品化する一方で、中年の女は、そのような取引から排除された性を持つという構造が、明らかになった。 (2)ウガンダで「メモリーブック」の調査を行い、結果を論文にまとめた。調査では、メモリーブックの作者11人に対面インタビューを行い、メモリーブック4冊を精読した。その結果、村の草の根の母たちが子どもに宛てて、エイズや自分や家族について書き記すことで、作者としての自己を確立するさまが明らかになった。また、メモリーブックが共同的に執筆されることで、新たな知の枠組みが構築されることが示唆された。 (3)ウガンダで女性出版社の調査を行い、インタビューを翻訳して発表した。多様な文学活動のうち、草の根の女たちに女性作家が聞き取りを行い、その人生譚を英語でまとめて出版するといった活動は、中産階級と草の根を文学によってつなぐ試みとして興味深い。この手法でHIV/エイズの体験談も出版されているので、今後上記(1)伝統的な文学、および(2)メモリーブックでのHIV/エイズの語りと総合して、分析を進めたい。
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Research Products
(6 results)