2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520522
|
Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
桂川 光正 Osaka Sangyo University, 人間環境学部, 教授 (30177422)
|
Keywords | 阿片 / 阿片取締 / 阿片政策 / 関東州 / ハーグ国際阿片条約 |
Research Abstract |
関東州阿片令の1921年の起草から24年の成立公布までの過程を実証的に検討し、「関東州阿片令制定をめぐる一考察」と題する論文として発表した。本稿では、まず、この勅令制定が、本来は、ハーグ国際阿片条約の趣旨に則って関東州における阿片習慣を制限ないし廃絶するためのものであったにもかかわらず、実際には、当時の同地における阿片習慣とそれを積極的に許容する関東州阿片制度に法的なお墨付きを与えるものとなったことを明らかにした。第二に、そうした結果となった主要因として、関東州当局の強い抵抗だけでなく、同地の阿片制度改変への意欲が政府全体にきわめて薄かったこと、枢密院もまたこれに非常に消極的であったことを挙げた。第三に、関東州における阿片収入の重要性が政府・枢密院を縛っており、彼らが財源の面から租借地当地の安定を優先していたことが、当初の目的と正反対の結果を生んだ原因であることを明らかにした。最後に、この制定過程を当時の世界情勢の中に置いてみると、日本政府には、阿片取締のための新たな国際協力体制の確立ないし安定に積極的に関与し寄与するという形で「大国」としての責任を果たそうという姿勢も、そうした発想も見られないことを指摘し、且つこれが同令制定過程における最大の問題点であるとした。 本研究の具体的な課題として構想したものの内の、(1)「公式」「非公式」両帝国における阿片・麻薬政策を検討して、欧米の帝国統治には見られない日本の帝国統治の特徴を明らかにすること、(2)当該時期の国際政治の焦点であった阿片・麻薬類の国際管理問題をめぐる日本の行動を明らかにし、それを通して、国際社会における日本の位置付けを試みること、この2課題に対する回答の一斑を、本論文によって提示できたのではないかと考える。
|