2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520551
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 文彦 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (30222384)
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Keywords | 帝国郵便 / 領邦郵便 / 時間意識 / 空間意識 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度の後半から取り組み始めた時間意識と空間意識の問題の解明にあたった。近世ドイツにおけるコミュニケーション革命は、人々の時間と空間意識を決定的に変化させた。時間意識に関しては、14世紀以降の公共時計の普及が基礎となり、教会の鐘による不定時から時計時間への変化が始まっていたが、時計時間が人々の生活リズムおよび時間意識を変える上で、郵便事業が大きな影響を与えた。郵便集配時間および郵便配達夫は、時計時間によって律せられており、人々は郵便を利用するためにこの時計時間に生活リズムを合わせ、また時計時間によって働く郵便配達夫の姿を見ることで、時間を守ることの意味を知ることになった。こうした時計時間による規律化により、人々が時計時間を意識することで、「より早く」という気持ちが芽生えることになる。社会は加速化の傾向を示すようになる。一方、空間意識の変化は、地図の作成および旅行ガイドブックの発行によってもたらされた。16世紀のヨーロッパは、貴族たちを中心に大旅行ブームの時代であり、旅行者たちは有用な道路地図を必要とした。そのために最初に作られた道路地図が、郵便路線地図だった。郵便路線がある場所は、道路があることを意味し、その郵便路線上には一定の間隔で宿駅が設置されていた。この宿駅で旅行者は、休息や食事をとることができ、また旅行用の馬を調達することができた。当時こうした地図を道路地図ではなく、郵便路線地図と呼んだことが、この当時の郵便の社会的位置づけを物語っていると言うことができる。 こうした時間意識と空間意識の変化は、社会の近代化にとって重要な役割を果たしており、コミュニケーションの変化による社会の変化を考察する上で格好の題材である。
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Research Products
(2 results)