2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期イングランドのジェントリ家系文書群に関する研究
Project/Area Number |
18520559
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
新井 由紀夫 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (30193056)
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Keywords | 中世史 / 史料学 / 家系文書史料群 / ジェントリ / イギリス / プランプトン家 / キャサリン・ラングレィ |
Research Abstract |
本研究は、中世後期のジェントリが関係する史資料の全貌を体系的に明らかにすることを目的としている。最終年度にあたり、イングランド北部のヨークシァ、リーズ市文書館所蔵の、プランプトン家文書を、まるごとデジタル画像ファイル化しその史料類型と内容のあらましを整理分析する作業のまとめを行った。プランプトン家文書のなかで特に興味深い一例を挙げるならば、領主裁判記録の写しがわざわざ残されていることである。プランプトン家はその記録を近隣の修道院の古い記録からわざわざ写し取っており、おそらく係争中の所領に関して、自家の保有権の正統性を主張するためか、あるいは荘園としての権利を復古的に新たに主張することを目指して、領主裁判記録を写し取ったものと理解される。また、比較分析したラングレィ家の1473年の家政会計記録から明らかになることは、食料品支出会計だけではない。対外戦争あるいは巡礼など、長期に他出する際に、帰ってくるまで持ち物を領主に預けるためにつくった覚書(契約書)が挿入されていて領主領民関係の一側面がわかったり、時の財務長官エセクス伯が、ランカスター派のオックスフォード伯を夏に撃退したあと、ラングレィ家の様子を見るために9月21〜22日に滞在していることなどが明らかとなり、政治史としての新事実が判明したりする。史料の類型化や分類は重要だが、それとともに史料ひとつひとつに即して、どのような読みが可能か、どのようなことを語ってくれるのかをきちんと見極めることが大切であることがあらためて明らかとなった。ジェントリが関係し保有した史資料は非常に多岐に亘り、その研究上の利用も多様なあり方が可能であり、今後もケーススタディの積み上げが重要であることがあらためて認識できた。
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Research Products
(1 results)