2007 Fiscal Year Annual Research Report
西ドイツ「第二の建国期」におけるドイツ社会民主党の変容
Project/Area Number |
18520564
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安野 正明 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 教授 (80202365)
|
Keywords | 戦後ドイツ / 社会民主党 / 1960年代 |
Research Abstract |
1950年代は万年野党を定められたかのような停滞状況にあったドイツ社会民主党(SPD)が,1960年代にいかなる変容を遂げて1969年の政権獲得に至ったのかを解明するのが,この研究課題の目的である。2年目の今年度は,(1)1961年の連邦議会選挙後,保守政党のキリスト教民主同盟・社会同盟との大連立政権樹立に向けての動きがあったことが知られているが,いかなる経緯で大連立政権が挫折したか,(2)「第二の建国期」と呼ばれる西ドイツの1960年代でも特にその後の社会に大きなインパクトを与えたと論じられる1968年の学生運動,その他様々な異議申し立て運動に対してSPDがどのように対応したか,について検討を進めた。 これらの論点を解明するために,夏季休暇を利用してドイツのボンに在るSPDの文書館で未刊行一次史料にあたり,関係する文献を購入した。文書館では1960年代の党指導部の会議議事録,党首のオレンハウアーを始めとする政治家の個人文書を閲覧した。(1)については当初考えていた以上に大連立に向けての交渉が党指導部レベルでは進んでいたこと,この時の失敗が1966年の大連立政権樹立につながっていたことが確認できた。(2)については,1968年の若者の抗議運動に対してSPDが予想以上に否定的,というか敵対的であったことが分かった。1968年の抗議運動を担った若い世代に1969年のSPD主導政権の首相となったブラントは強く支持されていたので,「1968年が追い風となって1969年の政権交代へ」と書かれることがあるが,実際は「1968年のゆえに政権交代」ではなく「1968年にもかかわらず」であった。実証分析の論文は今年度中には活字にできなかったが,ほぼ完成している原稿はあるので,来年度にまとめて発表する。
|