2008 Fiscal Year Annual Research Report
西ドイツ「第二の建国期」におけるドイツ社会民主党の変容
Project/Area Number |
18520564
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安野 正明 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 教授 (80202365)
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Keywords | 戦後ドイツ / 社会民主党 / 1960年代 / 政治文化 |
Research Abstract |
「西ドイツ『第二の建国期』における」という大枠を研究課題に設定したのは、1949年の西ドイツ建国後、一般には多大な困難なく西欧デモクラシーが定着したかのように思われているが、この「第一の建国期」においてはドイツに伝統的な反民主主義的政治文化は決して弱くなってはいなかったことを確認したからである.すなわち、西ドイツにアイデンティティの明確な「自分たちの民主主義」が定着した「第二の建国期」がいつごろで、戦前からの伝統的な反民主主義的政治文化はどのようにして変わっていったのか、それとドイツ社会民主党の変化はどのように関わっていたのかを研究した。今年度の研究は、具体的には、西ドイツの1960年代における社会変動を若干の分野・団体(司法・労働組合・教会など)を例に概観し、特に最近よく議論される「1968年運動」、つまり学生運動を始めとする異議申し立て運動が民主主義の定着にどのような貢献をなしたかを中心に分析と考察を進めた。 政治革命を目指した「1968年運動」は、それ自体はデモクラティックなものではなく失敗であり、それによって直接的かつ極めて短期的に変わったポジティヴなものはなかったと言って過言ではない。その意味で「ドイツを変えた1968年」というテーゼは誤解を招く。しかし「1968年運動」によって単に「神話」という概念では適切さを欠く政治文化の変化が、この中長期的な帰結として西ドイツには生じた。ドイツ社会民主党がブラント政権を樹立するのは1968年の翌年、1969年のことであり、この研究に着手する以前は若い世代に強く支持されたブラントの社会民主党と「1968年運動」との間には正の相関関係があるかと思っていたが、実は全く逆の関係にあったことがわかった。 2008年夏にドイツの社会民主党文書館で行った史料収集を生かして、現在は1960年代前半の社会民主党の研究を進めており、来年度の報告書取りまとめに向けて研究継続中である。
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Research Products
(1 results)