2006 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮三国時代の墳墓における棺・槨・室構造の特質とその変遷
Project/Area Number |
18520583
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉井 秀夫 京都大学, 文学研究科, 助教授 (90252410)
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Keywords | 朝鮮 / 三国時代 / 棺 / 槨 / 室 / 考古学 / 積石木槨墳 |
Research Abstract |
本年度は、大きく2つの具体的な主題を設定して研究を進めた。 第1は、三国時代百済墳墓における横穴系墓室、およびその内部に用いられた木棺についての資料収集および基本的な分析である。まず、最近類例が増加している、漢城期(475年以前)の横穴式石室の類例を集成し、基礎的な検討を進めた。次に、釘・鎹を中心とする緊結金具を通して、石室内に存在したと思われる木棺の構造を復元するための基本的なデータを整理した。百済墓制が6世紀前半に大きく変化する契機となったと考える公州市武寧王陵の研究動向については、『武寧王陵出土遺物分析報告書(II)』(国立公州博物館研究叢書第18冊、2006年)で整理し、国立公州博物館でのシンポジウム『武寧王陵発掘35周年記念および新報告書発刊のための武寧王陵学術大会』(2006年11月24・25日)で口頭発表した。 第2は、三国時代新羅墳墓を代表する積石木槨墳の構造の検討である。本年度は、日本人研究者により慶州古墳の発掘が進められた中で、「積石木槨」という埋葬施設の構造がどのように認識され、評価されてきたのかを検討した。具体的には、朝鮮総督府から刊行された報告書、今西龍らの関連論文、当時の新聞記事、京都大学考古学研究室所蔵資料などを比較検討し、慶州での日本人研究者による発掘調査年表を作成した。その上で、各調査ごとにどのような目的で、どのような手順で調査が進められ、埋葬施設の構造についてどのような認識をもつに至ったかを検討した。その結果、金冠塚の発見によって認識されたといわれてきた積石木槨の基本的な構造は、1918年に原田淑人が埋葬施設を面的に発掘することである程度まで知られており、その知識が1924年の金鈴塚・飾履塚の発掘調査に役立てられたことを明らかにした。
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