2007 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮三国時代の墳墓における棺・槨・室構造の特質とその変遷
Project/Area Number |
18520583
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉井 秀夫 Kyoto University, 文学研究科, 准教授 (90252410)
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Keywords | 朝鮮 / 三国時代 / 棺 / 槨 / 室 / 考古学 / 初期横穴式石室 |
Research Abstract |
本年度は、大きく3つの課題を設定して研究を進めた 第1の課題は、朝鮮半島西南部における横穴式石室の定型化過程の再検討である。昨年度に相次いで発見された漢城期百済の初期横穴式石室の特徴を検討し、1)棺の構造・副葬品の組み合わせ・被葬者数などにおいて、漢城期と熊津期以降の横穴式石室には大きな違いがあること、2)そうした違いが生じる背景として、横穴式石室出現以前の墓制との関係を比較検討する必要があること、3)近畿地方のおける横穴式石室の出現を考える際には、漢城期の横穴式石室との比較研究が必要であること、などを明らかにした。こうした研究成果の一端は、昨年10月の東北学院大学での国際シンポジウムおよび今年3月の古墳時代研究会で報告した。 第2の課題は、洛東江以西地域における初期横穴式石室の検討である。本年度は、関連資料の集成を進め、玄室平面の形状および規模と、埋葬に用いられた「棺」の構造と機能の検討をおこなった。その結果、洛東江以西地域における初期横穴式石室には、在地墓制と北部九州系墓制の折衷により固城地域で成立した、平面細長方形石室と、百済の影響を強く受けて高霊地域で成立した平面長方形石室という2つの系統があることを明らかにした。こうした研究成果の一端は、本年4月に第14回加耶史国際学術会議で報告する予定である。 第3の課題は、植民地朝鮮における考古資料撮影技術の考古学史的検討である。昨年度、積石木槨墳の調査研究史をまとめる過程で、当時の研究を支えた写真撮影技術の評価が必要であると判断し、京都大学考古学研究室に残された慶州関係写真の整理と分析を進めた。その結果、その中に1913年からはじまった解体修理作業以前の石窟庵を撮影した写真が存在することを確認し、大韓民国成均館大学校博物館所蔵藤田亮策旧蔵ガラス原板資料との比較検討をおこなった成果を論文として発表すると共に、日本史研究会2007年12月例会で口頭発表した。
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