2009 Fiscal Year Annual Research Report
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18530002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺尾 美子 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (20114431)
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Keywords | アメリカ法制度 / 内部告発者保護 / 政府調達過剰請求支払返還訴訟 / 刑事的民事訴訟 / 私人による法の実現 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、アメリカにおける内部告発者保護制度の草分け的存在である、False Claims Act(政府調達過剰支払返還請求訴訟法)(qui tam action:刑事的民事訴訟)の研究を中心に行った。この制度は、南北戦争時代のリンカーン大統領政権に遡る制度であり、戦争遂行のための政府調達における無駄(過剰請求)をそれを証明できる私人による、告発、訴訟遂行を活用することで、減少させることを目的とした制度である。政府に対する過大請求の立証に成功した私人には、訴訟の成功によって政府に返却される金銭の一定割合が報償として与えられた。この制度は、その後も、革新時代の制度強化を経て、今日にまで受け継がれている。 今年度は、この訴訟の、手続き的特徴の研究を行った。また、この制度を活用して、政府に返却されている金銭が少なくない現状の資料も収集した。 本研究は、アメリカにおける内部告発者保護制度を、全体的に把握することを目的としてきた。アメリカの内部告発者制度は、連邦法と州法に分かれ、また、それぞれについて、判例法と制定法がそんざいする。また、制定法については、様々な分野を横断的に対象とする一般法と、たとえば、原子力発電関係tといった、個別分野毎の法制が存在する。今年度に選考する年度では、これらについての考察を行ってきたが、今回は、アメリカの内部告発者制度の一つの期限といえるFalse Claims Actbの制度的研究を行うことで、アメリカの制度全体を貫いている、いわば思想的特徴というか、発送的特徴を明らかにできたように思われる。こうした、アメリカ法制度の特徴は、今や古典的名著ともいえる『法の実現における私人の役割』(田中英夫・竹内昭夫1987東大出版会)であきらかにされた、法の実現を、官だけでになうのではなく、私人にもその権能とインンせんティブ(経済的インセンティブ)を与えるという、アメリカ法の一大特徴につらなるものである。そして、こうした法思想、社会思想(法というものの捉え方、私人と法の関係のとらえかたが、アメリカの内部告発者制度の底流にもながれていることを、ある程度あきらかにすることができた。
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