2006 Fiscal Year Annual Research Report
阿蘇地域における町村合併と入会権の調整に関する研究
Project/Area Number |
18530009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉田 勇 熊本大学, 法学部, 教授 (50037074)
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Keywords | 基礎法学 / 入会権 / 町村合併 / 阿蘇地域 |
Research Abstract |
1 平成17年2月の阿蘇市の成立の前史を明らかにするために、旧藩時代、明治から戦後の合併までの町村合併史を辿り、その間の入会権をめぐる争いを概括的に明らかにした。明治の大合併と昭和の大合併により、現在の阿蘇市域にあった自然村が、どのように阿蘇町、一の宮町および波野村という三つの町村に編成されるに至ったかが明確になった。 2 昭和29年の阿蘇町の成立に向けた1町4村の合併では、村有牧野、採用地の使用については、従前の使用慣行どおりとされ、町村有の山林で部分林の関係のあるものは旧慣を遵守し従前の使用慣行どおりとされた。同じく昭和29年の一の宮町の成立に向けた1町4村の合併では、原野は従来の使用慣行を尊重するものとされたが、新町の基本財産として一定の山林を一定の人口比率により新町に引き継ぎ、山林原野その他の基本財産は財産区とされた。波野村も産山村との合併の動きはあったものの、この合併は成立しなかった。 3 阿蘇市の誕生に向けた町村合併協議の時点における入会地の地盤所有の実態をみると、一の宮町の入会地はすべて町有であったのに対して、阿蘇町の入会地には16の町有地、7つの共有地(地盤所有権も入会権も入会集団が持つ入会地)および1つの私有地があった。それに対して、波野村には村有入会地はひとつもなく、すべて共有地と私有地であった。 4 阿蘇市の成立に向けた、阿蘇町、一の宮町および波野村の町村合併に際して、新たに「財産区」は作らないという申し合わせが成立していたので、入会地の地盤所有権は阿蘇市に引き継がれたか、旧の村有に移されたかのいずれかになったものと推測されるが、合併に際して町有入会地をめぐる具体的な利害調整の過程を牧野組合レベルで明らかにするのは、平成19年度の調査の課題である。 5 コモンズという視点から土地の共同利用管理のあり方を見直す作業を進めた。
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