2007 Fiscal Year Annual Research Report
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18530018
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 秀美 Osaka University, 高等司法研究科, 教授 (50247475)
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Keywords | 表現の自由 / 放送法制 / 通信と放送の融合 |
Research Abstract |
今年度も、収集した資料や、放送・通信事業の関係者との面談を通じて、放送・通信にかかわるデジタル技術の実用化の動向を調査した。また、これと並行して日本の放送法制とそれに基づく立法や行政のあり方について検討した。 本研究のため2006年度に少人数でスタートした研究会を拡大し、憲法・行政法・メディア法の研究者のほか、NHK及び民間放送において放送制度の運用に携わっている実務家、合計10名程度の研究会を2007年8月にスタートさせた。その後、ほぼ1カ月に1度のペースで、放送法制についての検討を行っている。毎回、2007年12月の放送法改正、通信と放送の融合に対応するための今後の放送法制のあり方など、放送法制に関連する具体的なテーマを設定して報告者をたて、報告と討論を行っている。 このほか、研究代表者は、2007年6月に開催された日本マス・コミュニケーション学会のシンポジウムにおいて、「メディア法はどこへゆくのか」というテーマで報告を行った。報告はメディア法全般についてのものであったが、その中で、研究を進めている放送法制についても、問題点を指摘し、改革の方向性を示した。この報告は、学会紀要72号に掲載された。 2007年度はこのほかにも放送法制に関連して2つの業績を公表した。ひとつは、ジュリストに掲載された「情報法制」という論文である。この論文は情報法制全般についてのものであったが、その中で、放送法についての項目を設け、日本の放送法制における内容規制の問題点について論じた。番組内容の真実性確保については、2007年1月に関西テレビの番組捏造事件が発生、すでに準備されていた放送法改正案に、虚偽放送に対する新たな行政指導のための根拠規定が付加された。そこで、「事実まげない」という番組編集準則と、新たな行政指導の関係をどのように考えるべきか、番組の真実性の確保のために総務省が番組内容をチェックすることにともなって生じる憲法上の問題を指摘した。なお、この改革案は、表現の自由の観点からの批判を受けて、放送法への採用は見送られた。 もうひとつの業績は、関西テレビの捏造事件発生後、同社が進めている改革の概要をまとめたものである。研究代表者は、2007年度、この改革の立案と実行に直接にかかわった。この改革は、公権力の介入によるのではなく、放送事業者、放送制作者の自律の強化によって、番組捏造を防止するという考え方によって進められている。現行放送法制の枠組みの中で、放送の公共性を確保するための放送事業者の自主的な取り組みとして、本研究のテーマにとっても興味深い実例である。
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Research Products
(3 results)