2007 Fiscal Year Annual Research Report
人権規制目的としての「安全」と比例原則の関係についての比較法的・総合的研究
Project/Area Number |
18530030
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西原 博史 Waseda University, 社会科学総合学術院, 教授 (10218183)
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Keywords | 比例原則 / 法治国家 / 対テロリズム規制 |
Research Abstract |
本研究は、ドイツ法治国家論の基本原理として法的な内実を発展させてきた比例原則に関する理論的な研究を踏まえ、「安全」維持目的の国家行為への適用を意識した場合に必要になる比例原則の変容を研究対象とし、21世紀の現実的な要請に耐えうる比例原則の体系的理論の構築を目指す。その際、A:法治国家原理から派生する比例原則の理論的研究、B:EU法における比例原則の発展に関する実務動向研究、C:ドイツ憲法判例上の治安目的規制に関わる違憲性審査の比較法的研究、の三つの柱を軸に進められている。 このうち、Aについては、BおよびCに関するオリジナルな研究成果を発表する前提として踏まえるべき認識を確立し、当面の目標に到達した。Bについても07年度において性差別を受けない権利の領域におけるEC裁判所の最新判例動向に関する論文(共著)を発表し、実務動向の基本的な方向性に関する具体的な研究成果を得た。Cについては、ドイツ連邦憲法裁判所の判例動向に関する研究論文を完成させ、公刊を待つ段階にある。これらの成果を踏まえて、研究最終年度である08年度には、A〜Cの三領域における成果を総合して、「安全」目的の基本権規制が日本で行われる際に、それが過度の権利侵害を惹起しないよう司法的に統制する具体的な基準を明らかにする作業を完成させる。 現時点までに確認されているのは、主に以下の点である。すなわち、国家による規制が実害発生の前段階に重点を置きつつある現在の「予防原則」的思考枠組の下、比例原則を適用した違憲立法審査が果たすべき機能が一方では増大しているが、他方では比例原則の内部空洞化が--比例原則が計量化可能な「重さ」の衡量や、実質的な必要性の審査を軸とする限りにおいて--進行している。その空洞化に対処するには、規制目的の明確性を中心に置いた形で比例原則を再組織することが重要となる。
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