2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長瀬 修 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 特任准教授 (60345139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 公士 新潟大学, 大学院・実務法学研究科, 教授 (80145036)
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Keywords | 障害 / 障害者 / 国際人権 / 障害者の権利条約 / 差別禁止 |
Research Abstract |
前年度の2006年12月13日の総会による障害者の権利条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities:CRPD)の採択、2007年3月30日の署名開放を受けて、当該年度においては各国による署名(日本政府は2007年9月28日に署名)と批准が進行したため、策定過程および早速開始された次のステップである実施過程の研究を進めた。教育など個別分野を含む策定過程への政府と障害NGOの関与の過程を詳細に分析した。 明らかとなったのは、策定過程において、地域としては、1993年以来の第1次・第2次「アジア太平洋障害者の10年」の経験を持ち、途上国での取り組みを重視してきたアジア太平洋地域が策定過程において、バンコク草案(2003年10月)などを通じて、大きな貢献をなしたことである。また、国際障害同盟(IDA)の加盟組織をはじめとする障害NGOや他のNGOが策定過程において時にはお互いに対立(たとえば教育におけるインクルージョンと分離)しながらも総体としては、大きな影響力を行使した点も明らかになった。障害者の参画という障害学(disability studies)にとって重要な視点からは、とりわけ1990年代以降ようやく活発になってきた知的障害者と精神障害者によるそれぞれ本人による積極的な策定過程への参画が注目される。従来、家族や専門家、支援者によって「代弁」されてきたグループだからである。 さらに、日本政府をはじめとする各国政府が、総論としての障害者の権利保障には賛成しつつも、差別禁止や教育をはじめとする具体的課題に関しては、自国政府の従来の政策変更に大きな抵抗を示した点も示され、今後の実施過程の分析においても、この点は引き続き大きな要素として見逃せない。
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