2007 Fiscal Year Annual Research Report
紛争後復興開発期の多民族共存社会における平和構築活動の現状分析
Project/Area Number |
18530118
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
大平 剛 The University of Kitakyushu, 外国語学部, 准教授 (30303605)
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Keywords | 国際協力 / 平和構築 / 開発援助 |
Research Abstract |
平成19年度は10月末からおよそ10日間の日程でボスニア・ヘルツェゴヴィナ(以下、ボスニア)のサラエヴォ市とバニャ・ルーカ市に赴き、国際機関職員等へのインタビューを行った。インタビューでは、デイトン和平合意直後から多くの援助機関がボスニアに押し寄せた中で、宗教系のNGO団体が特定の宗教信者である国内避難民に対して住宅建設を行うなど、援助活動を通してその町の人口構成比を変えてしまったという事実が明らかとなった。また、別の町では二国間援助機関の本国の意向により、難民を早期に帰還させる目的で住宅が建設されたものの、元の住民は帰還せずにそれらの住居が貸し出され、賃貸料を得ているとの事実が明らかとなった。前者はボスニア南部のストラッツ市近郊で行われたものであり、民族の分断状況を深める結果になったと考えられる。後者はボスニア北部のプリエドール市とサンスキモスト市近郊でのケースであり、そもそもの目的を達成できなかった援助の失敗例であったと結論づけられる。 以上の調査結果から、紛争終結直後の混乱期において、数多くの援助機関が短期的な利害に基づいて援助活動を行ったことは、長期的に見ると必ずしも良い結果をもたらしてはいないことが分かる。このことから、多民族が共存できる社会を平和構築活動によって実現するためには、援助活動の早期調整とそのための調整機関が必要であるとともに、そのような機関が長期的な視点に立った援助計画を策定する必要性が指摘できる。
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Research Products
(1 results)