2006 Fiscal Year Annual Research Report
社会的正義の政治経済学をめざして:経済学・政治学・法学による総合的研究
Project/Area Number |
18530141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
須賀 晃一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00171116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須賀 晃一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00171116)
藪下 史郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30083330)
若田部 昌澄 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00240440)
若松 良樹 成城大学, 法学部, 教授 (20212318)
吉原 直毅 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (60272770)
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Keywords | 社会的正義 / 政治経済学 / 実証分析 / 規範分析 / 政治経済実験 |
Research Abstract |
本年度は、規範的研究、歴史的研究、実証的研究、実験による研究のそれぞれを担当するグループで、次のようなテーマを扱った。規範的研究では、個人の選択が、いかなる意味で合理的であると規範的に評価されるのかを検討した。それとの関連で、規範理論の重要な概念装置としての「無知のベール」を公理的に特徴づけた。また、「福祉国家」政策の厚生経済学的基礎理論に関連して、ベーシックインカム制度を合理化する社会的厚生関数の構成可能性、「機能と潜在能力」指標を用いた協力的交渉ゲームの公理的研究も行った。歴史的研究では、思想史・制度史の観点から、政治学、経済学、法学の接点を探った。19世紀中ごろから20世紀中ごろを対象として、再分配とデモクラシーについての経済学者たちの考察、経済政策形成過程における知識の役割についての考察などである。実証的研究では、所得格差・経済格差と正義原理との関連について、特にロールズの正義原理(マキシミン原理)から見た格差の解釈について検討した。実験による研究では、公共財に関するグループ形成の実験、現実の人々がもつ「正義感」と「利他的懲罰」関係を調べる実験を行った。 年度末には、政治学者・経済学者・法学者に加えて、社会学者を交えて社会的正義と現代リベラリズムに関するシンポジウムを行った。社会的正義がさまざまな政治経済制度・法制度・社会制度の設計に与える効果の分析と、制度が時間の経過(歴史)の中で社会的正義を変貌させる効果の分析を行うというわれわれの目的にとって、社会学との対話が重要であることを確認できた。さらに、現代リベラリズムが社会的正義に過大な役割を課しているとの認識の下に、社会的正義を包摂するもっと広い概念(公共性など)を中心にすえた分析や理論構成の重要性を指摘する論者も多数見られた。この点も今後の重要な課題となる。
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Research Products
(28 results)