2007 Fiscal Year Annual Research Report
社会的正義の政治経済学をめざして:経済学・政治学・法学による総合的研究
Project/Area Number |
18530141
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
須賀 晃一 Waseda University, 政治経済学術院, 教授 (00171116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須賀 晃一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00171116)
薮下 史郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30083330)
若田部 昌澄 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00240440)
若松 良樹 成城大学, 法学部, 教授 (20212318)
船木 由喜彦 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (50181433)
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Keywords | 社会的正義 / 政治経済学 / 実証分析 / 規範分析 / 政治経済実験 |
Research Abstract |
本年度は、全体として2つのテーマを設定し研究を進めてきた.1つは政治経済学において中心的な役割を果たす公共財の利益・費用をめぐる社会的正義の概念に関する考察である.公共財の生産や公共財から得られる利益の分配やその意思決定に関する問題の解決にとって、「正義」または「公共性」の概念をどう再構成し、新たな民主的社会の原理に鍛え上げるか.われわれは、公共財と公共性の階層構造に注目し、それぞれの層で要求される価値理念を善との関連で位置づけなおした.類としての人に必要不可欠な公共財(大気や地球環境など)には、あらゆる時代のすべての人々に対して平等なアクセス権を保障することが最も重要な理念となるし、その実現が共通善の達成となる.対極にある私的財は効率性が最も重要な価値理念だが、その円滑な取引のために要請される所有権制度などの公共財では、世代を超えた機会の均等と平等な費用負担が重要な理念となる.中間に位置する地域的公共財ではメンバーシップの維持のために費用負担に応じた利益配分と効率性が要求される.ここで必要となる平等性は利益説的なものであるが、メンバーシップへの平等なアクセスが別の観点から要請される. もう1つのテーマは、政治経済実験と規範分析の接合である.政治経済実験を通じて得られた結果から、政治学・法学・経済学・社会学などの諸分野に含まれる規範分析が何を学び、新たな知見をどのように統合するか、また逆に、各分野の正義に関する命題が政治経済学実験を通じてどのように検証されるかを検討し、シンポジウムを開催した.シンポジウムを通じていくつもの興味深い論点が指摘された.たとえば、政治経済学実験から得られた「個人的利益に反するが公正さを考えればそのように行動する」と解釈できる被験者の行動をめぐっては、政治学・経済学・法学・社会学の間で方法論を含めた対立があることも認識できた.
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Research Products
(30 results)