2008 Fiscal Year Annual Research Report
社会的正義の政治経済学をめざして:経済学・政治学・法学による総合的研究
Project/Area Number |
18530141
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
須賀 晃一 Waseda University, 政治経済学術院, 教授 (00171116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薮下 史郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30083330)
若田部 昌澄 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00240440)
若松 良樹 成城大学, 法学部, 教授 (20212318)
船木 由喜彦 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (50181433)
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Keywords | 社会的正義 / 政治経済学 / 実証分析 / 規範分析 / 政治経済実験 |
Research Abstract |
本年度は,3つのテーマを設定し研究を進めてきた.第1のテーマは公共財や準公共財,コモンズからの利益と費用負担をめぐる社会的正義の考察である.社会的正義の対象とする利益と費用負担,権利と義務は,財空間の性質に依存して異なる.地方公共財が中心となるローカル・レベルでは効率性と衡平性が,憲法などの純粋公共財が含まれる国家レベルは衡平性・平等性・均等なアクセス権が主要基準となる.国際公共財・地球公共財が含まれる世界レベルでは,人類すべてに生存権が保障されるよう,均等なアクセス権が重視される.このように,社会的正義の対象となる財空間が階層構造を持つため善も階層構造を持ち,階層ごとに要求される社会的正義の構成理念・公理も異なることが明らかにされた.また,コモンズの悲劇に対する解決策をメカニズム・デザインの立場からも検討したし,社会的正義に関する合意形成を図る道具としての無知のベールについても考察した. 第2のテーマは政治経済実験と規範分析の接合である.昨年度に行われたシンポジウムでの議論を受けて,規範的感情と経済行動の関連を明らかにするための実験を実施した.実験では前半に分業を課し,後半に課された仕事ごとに被験者をグループ分けし,囚人のジレンマ型のゲームをプレイさせた.その結果,一般的に同じグループ内での協力率が高く,公正感や信頼感が高いほど協力する傾向にあることがわかった. 最後のテーマは政治学・経済学・法学に共通の分析的概念の再検討である.価値理念に関して,「存在から当為は導き出せない」という命題の妥当性に議論を集中した.確かに,あらゆる場面において存在から当為を導き出すことには問題があるが,当為が事実上存在論的な基盤をもつ場合一進化の産物としての規範-はその限りではないことが確認された.政治学・法学・経済学などの諸分野で同様の議論が成立することにも同意が得られた.
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Research Products
(15 results)