2006 Fiscal Year Annual Research Report
表明選好法による自然環境の経済的価値評価の有効性-琉球列島を事例として
Project/Area Number |
18530185
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
藤田 陽子 琉球大学, 法文学部, 助教授 (70315456)
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Keywords | 表明選好法 / 経済的価値評価 / 支払意志額 |
Research Abstract |
本研究課題の目的である環境評価手法の有効性の検証に向けて,平成18年度は表明選好法を含む環境の経済的価値評価手法に関する文献・資料の収集と先行研究のレビューにより,手法としての問題点と改善点を抽出する作業を行った.また,平成19年度に実施する調査の準備段階として,調査地の選定や調査票に記載する仮想状況のシナリオ設計に必要な情報の収集を行った. 文献調査等の結果,今後の検証課題として,(1)実際の環境保全費用に関する情報を被験者に与えることによって発生するバイアスが推定結果の有効性に与える影響,(2)被験者の主観的印象と推定された支払意志額との整合性の問題,(3)便益移転の可能性に関する検証,等が挙げられる.とりわけ便益移転に関しては表明選好法による評価をより実用性の高い方法として確立するために不可欠な研究課題であり,また,主観的印象との一致性も事業評価等の政策への適用可能性を左右する重要なファクターとなる. また,今後の調査の準備段階として行ったヒアリング調査では,各人の自然環境との関わり方によって保全費用負担に対する考え方が大きく異なることが伺われた.すなわち,マリンレジャーやエコツアーなど自然環境を利用する業種に携わっている者やダイバーなど自然を楽しむことを目的に沖縄を訪れている者は,自然環境の重要性を認識すると共にその保全費用の負担に関しても積極的であるが,自然環境との特別な関連性を持たない県民は保全の必要性を認めつつも費用負担については消極的であり,「それは行政の役割である」と考える傾向が強くなる.限られた人数に対するヒアリング調査のためより詳細な調査を要するが,こうした主体間の意識の差異が支払意志額に影響していることは十分に推測される.この場合,表明選好法は果たして「価値観を金額で評価する」という目的を実現できているのか,という重要な課題に直面することとなる.この点については今後の本調査を通して検証する.
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