2008 Fiscal Year Annual Research Report
表明選好法による自然環境の経済的価値評価の有効性-琉球列島を事例として
Project/Area Number |
18530185
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
藤田 陽子 University of the Ryukyus, 法文学部, 准教授 (70315456)
|
Keywords | 表明選好法 / 経済的価値評価 / 琉球列島 |
Research Abstract |
平成20年度は本課題最終年度であり,課題研究の総括を中心に実施した.本課題は,環境の経済的価値評価手法のうち,表明選好法を用いた環境価値評価手法の理論的特徴を把握した上で,特に沖縄を中心とする琉球列島という特徴ある自然環境の価値評価に適用する場合の当該手法の有効性と問題点を明らかにすることが目的である. 前年度から継続して,手法の理論研究と共に奄美大島・沖縄本島・石垣島での実地調査を行うことにより島嶼地域の自然環境や社会環境に見られる特徴を明らかにしてきた.こうした調査を通して,表明選好法(CVM,コンジョイント分析等)で用いられるアンケートの回答に影響を与えるいくつかの要因を抽出し,琉球列島という特色ある島嶼地域において本手法を適用する上での課題となる点について考察した.特に,本地域はすでに観光地としての高い知名度を誇っており,多くの観光客が訪れ,また観光関連業種に携わる住民が多い.このような社会的背景は,地域住民の観光客による環境保全費用負担への過大な期待を生み,表明金額に与える影響も大きいと考えられる.また一方では,「沖縄ブーム」という形でその自然環境が外部からの高い評価を受けたことによって,住民自身の評価も上昇しつつある現状がある.さらには,2008年の国際サンゴ礁年をきっかけに,マスコミ等で取り扱われる自然環境の危機的実態に関する情報に触れ,保全の必要性に対する認識が高まる傾向にもある.こうした「自然環境を巡る社会環境の変化」は,たとえ短期的な変化であったとしても,表明選好法を用いた価値評価の結果に大きな影響を与える要因となることが推測できる. なお,評価手法に関する研究成果の一環として,土屋誠教授(琉球大学理学部)との共著「サンゴ礁のちむやみ一生態系サービスは維持できるか」(東海大学出版会)を執筆し,2009年5月の出版を予定している.
|
Research Products
(1 results)