2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本における資産分布の決定要因に関する理論的・実証的分析
Project/Area Number |
18530212
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
竹田 陽介 Sophia University, 経済学部, 教授 (20266068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 貴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00264581)
山島 敬久 上智大学, 経済学部, 准教授 (70286756)
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Keywords | 教育 / 世代 / 将来不安 / 情報集約機能 / 借り入れ制約 |
Research Abstract |
本研究はi)借り入れ制約,ii)将来不安,iii)不確実性に着目し,資産分布の決定要因となる家計の教育支出,家計の世代間の格差継承,金融市場の情報集約機能について実証的に分析してきた. 1.家計の教育支出(出島・竹田・上田)「消費生活に関するパネル調査」個票データを用いて,日本の家計における子供への教育支出に対して,親の教育,所得や資産が影響しているかどうかについて分析した.借り入れ制約のない人的資本モデルとは整合的ではないが,借り入れ制約のある人的資本モデルや消費としての教育モデルとは矛盾しない. 2.世代間の所得格差の継承・将来不安と所得格差認識(上田)同調査データを用いて,親の所得や教育水準が子ども時代の教育選択に与える影響と,教育選が学卒後の所得に影響しているかを検証した.教育を媒介とした経路は,主として短大・大学進学に親の所得が影響し,さらにこれら高学歴の揚合に子が高所得を得るという経路に集約される.また早稲田大学「21世紀日本人の社会・政治意識に関する調査」平成17年個票データを用いて,家計の将来不安と格差拡大に関連する認識について分析を行った.所得が低いあるいは生活レベルが低いと感じている人の方がより所得格差が拡大していると考え,格差が生じる理由としてより出身家庭や周囲の環境が関係すると考える傾向にある, 3.金融市場の情報集約機能(竹田・矢嶋康次(ニッセイ基礎研究所))流動性の民にある日本経済において,金融市場における「情報集約機能」が著しく低下し,ケインズの「美人投票」のメカニズムにしたがって,投資家の期待形成が同質化したという仮説について実証分析を行った.量的金融緩和が強化される中で,美人投票のメカニズムにより,金融資産価格が公共的なシグナルに過度に依存する状態の下で,市場の期待は同質化した.「情報効率性」から見て,金融市場の情報集約機能は著しく低下してきた.
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