2008 Fiscal Year Annual Research Report
グローバリゼーション下の経済発展と金融制度に関する政治経済学的分析
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18530245
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
薮下 史郎 Waseda University, 政治経済学術院, 教授 (30083330)
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Keywords | 経済発展 / 金融制度 / グローバリゼーション / 政治経済制度 / ROSCA / インフォーマルな金融制度 / グループ貸付 / マイクロクレジット |
Research Abstract |
本研究の目的は、「市場や情報の不完全性、経済制度と金融制度」をグローバリゼーションの観点から理論的かつ歴史的・実証的に分析することである。新古典派経済学によれば、グローバリゼーションによって資源配分が世界的な規模で効率的になされることになるが、多くの国、とくに途上国ではそれを実現するための市場条件や法制度などが整備されていない。またこれらの分析では、経済活動と政治的背景との関連が重要である。グローバリゼーションは経済のみならず、政治面でも「テロとの戦い」など複雑な問題を生みだしてきた。したがって本研究では狭い意味での経済学ではなく、広く政治経済学的な視点から研究を行っている。本年は以下のような研究活動を行ってきた。 (1)グローバリゼーションがもたらす利益と損失についての諸説を整理したものを講演また論文として発表した。そこでは、グローバリゼーションは、新古典派の主張するように完全競争的な市場経済を実現するのではなく、多様な経済社会制度が混在するモザイク模様の経済をもたらし、市場と政府に加えてNPOや共済組合的な部門が効果的な役割を果たすであろうことを指摘した。 (2)「テロリズム」を経済・政治・心理学的な観点から考察した、Alan Krueger著What Makes a Terrorist: Economics and the Roots of Terrorismを翻訳し刊行した。そこで提示された分析内容についてGCOE(制度の構築の政治経済学)主催のコンファレンスで報告を行い、パネラーと意見交換を行った。 (3)昨年まで大学院生と行ってきた、インフォーマル金融についての共同研究に基づく論文を早稲田大学現代政治経済研究叢書に発表した。 (4)本研究内容を反映した金融論のテキストを執筆した。2009年中に刊行予定。
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