2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナチス金融システムとライヒスバンク政策に関する史的研究
Project/Area Number |
18530260
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
三ツ石 郁夫 Shiga University, 経済学部, 教授 (50174066)
|
Keywords | 金融システム / ナチス / ライヒスバンク / 通貨政策 / 為替管理 / 貿易管理 / 軍備拡大 / 戦時経済 |
Research Abstract |
当該年度においては、ライヒ経済省マイクロフィルムを中心に分析することによって、課題テーマについて次のような成果を明らかにした。 第一に、ナチス経済体制にとって重要な課題であった金・外国為替準備の危機を解決するために、政府ライヒスバンクは1934年からいわゆる輸入管理のための「新計画」を導入し、さらに1935年から外貨獲得のための輸出奨励補助金政策を展開した。このための資金は広く国内産業企業の利益から拠出されたが、銀行も拠出の対象とされた。第二に、1936年の4ヵ年計画は外貨節約と弾薬製造を主目的に実施されたが、政策決定が多元的であったために翌年までに軍備拡大目標を達成できないことが明らかになった。そこで1938年2月、ライヒスバンク・ライヒ経済省・国防軍の関係部局を統合して、ゲーリングの下に4ヵ年計画実施を政策調整する「ライヒ経済拡充局」が新たに設置された。軍備拡大政策はこれを契機として、供給者国庫証券ならびにライヒ国債・国庫証券の大量増発による軍需物資増産、軍需向け原料中心の輸入を開始し、ナチス経済体制は準戦時経済へと大きく転換した。 ナチス金融経済体制においては、軍備拡大のための資金調達と外貨準備減少をめぐる金融システムが機能麻痺に陥ったことがこれまで指摘されてきた。本研究成果の意義は、それと関連しつつ構築された自給と貿易・為替管理に基づく軍備拡大体制そのものが限界を迎え、これを克服するために領土拡大が不可避となることを明らかにしたことである。これはドイツが第二次大戦に踏み切る重要な経済的要因として考えられる。1938年夏、ドイツはすでに準戦時体制に入る。この枠組みに基づいた研究成果の公開を今後も継続する予定である。
|
Research Products
(1 results)