2008 Fiscal Year Annual Research Report
理論社会学と公共哲学および少子高齢化問題を通じての公共社会学の構想に関する研究
Project/Area Number |
18530371
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
盛山 和夫 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50113577)
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Keywords | 社会学 / 公共社会学 / 公共哲学 / 少子高齢化 / 所得格差 / 分配原理 / リベラリズム / 公正 |
Research Abstract |
(1)少子高齢化の問題については、日本において、現役世代の間での所得格差と比べて高齢者の問でのそれが著しく高い理由を実証的に探求した。種々の既存資料や既存研究を検討すると、日本の高齢者の間での所得格差が、(a)諸外国のそれと比べて高いかどうかと、(b)近年、拡大しつつあるかどうか、という点についてははっきりしない。しかし、(c)日本の現役世代と比べると高いという点は明確である。高齢期の生活機会格差については、実証的な裏付けなしに、現役時のキャリアの違いにおける格差力§年金制度などを通じて増幅されるとする議論が多い。本研究はその点を中心に、1995年SSM調査データを分析したが、結果として、その要因は否定され、むしろ「被雇用退職後に自営層が増えること」と「現役世代は年功序列賃金で世代内所得格差が抑制されるため」という、きわめて日本的な2つの要因の役割が大きいことが明らかとなった。 (2)格差・不平等の一般問題については、現代リベラリズムをはじめとして、既存の平等主義的規範理論が「マナ型」分配論になっていて、財の生産局面の無視と帰結への無配慮という問題をもっていることを指摘し、それに代わる公正な分配原理の探求を、ゲーム理論的な構図のモデルを用いて進めた。 (3)公共社会学の構想については、国際的にみても今日の社会学がアイデンティティの危機ともいうべき問題状況にあることの要因を分析し、それをのりこえるために、共同性と公共性とを価値理念とする公共社会学の展開が必要であると論じた。
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Research Products
(7 results)