2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530406
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 成基 Hosei University, 社会学部, 准教授 (90292466)
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Keywords | 国籍法 / ドイツ / ナショナル・アイデンティティ / ネーション / 移民 / ブルーベイカー / シチズンシップ / 国家 |
Research Abstract |
1999年のドイツ国籍法改正にいたる国籍法改正をめぐる政治的公共圏における論争において、ナショナル・アイデンティティ(ドイツ人によるドイツに関する自己理解の方法)がいかなる役割をもっていたのかを考察した。1999年の改正は、1913年以来の純然血統主義に依拠した「帝国国籍法」を大幅に改正し、出生地主義を導入した。アメリカの社会学者ロジャーズ・ブルーベイカーの説明に従うなら、1913年以来のドイツ国籍法は、ドイツに特徴的な「エスノ文化的」なナショナル・アイデンティティと親和性を持つものであった。であるとするならば、1999年のドイツ国籍法改正は、そのようなドイツのナショナル・アイデンティティの変容を伴ったものであったのだろうか。 本研究は、1980年代後半から始まる国籍法論争を検討し、ブルーベイカーの言う「エスノ文化的」なネーション概念は、すでに1980年代の段階から時代錯誤的なものとみなされており、出生地主義導入反対派からも真剣に表明されたことがなかったことがわかった。1999年までの国籍法改正論争におけるネーション理解をめぐる争点はむしろ、ブルーベイカーがフランス的なものと位置づけた「市民的」ないし「国家中心的」なネーション概念をいかに解釈するか、すなわち法的秩序の下の多文化的平和共存か共和国への忠誠意志かという点にあった。この対立は、定住化が進む外国人(移民)を、いかにドイツ社会に「統合」するかという状況において、喫緊なものになっていった。
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