2006 Fiscal Year Annual Research Report
制度の維持と変化を司る心理的基盤とその進化的・文化的要因
Project/Area Number |
18530482
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡部 幹 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 助手 (40241286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 洋紀 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 助手 (10332727)
清水 和巳 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教授 (20308133)
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Keywords | ゲーム理論 / 信頼 / 協力 / fMRI / 前頭葉 / 実験 / 経済交換 / 脳イメージング |
Research Abstract |
社会的交換を行う相手をどの程度信頼できるかを判断する際、脳ではどのようなことが起こっているのかを調べるために、fMRIを用いた実験を行った。20名の参加者それぞれに、初対面の人物に関する情報を与え、信頼性判断に役立つ情報を得た時に賦活する部位5箇所(尾状核、被殻、前帯状回/溝、左右前頭葉内側部、角回)を特定した。これらの領野の多く、特に左右前頭葉内側部や前帯状回/溝は、これまでにも社会的な意思決定の際に賦活することが多くの研究で報告されており、これらの知見と一貫した結果を得ている。重要なのは、Delgadoら(2005)が示した賦活部位と本研究で見出したこれらの部位はすべてオーバーラップしている点である。すなわち、実験室における抽象的なゲーム実験と現実場面での判断での賦活部位が同じことは、実験ゲーム研究で調べられた意思決定メカニズムが生態学的妥当性を持つ可能性が高いことを示すものである。従来、実験ゲーム研究の生態学的妥当性に関しては疑問が提示されてきたが、この知見はその疑問に対する答えのひとつとなろう。 さらに、被験者の信頼パーソナリティスコアを高・中・低の三段階に分け、上記5部位の活性度合いを段階ごとに記したところ、どの部位に関しても、中信頼者の活性が最も高いことが示されている。これまでの認知心理学的な知見(小杉・山岸1996,林・与謝野2005)では、高信頼者が信頼情報に最も敏感であるという知見や、低信頼者の方が敏感であるという知見など、いくつかの知見が報告されているが、この結果はいままでのいずれとも異なるものである。さらに、低信頼群と高信頼群のみの比較では、左右前頭葉内側部のみ高信頼者の賦活が高いのに対し、他の部位では低信頼の賦活が高い。これらの結果は有意ではないものの検討に値する知見と考える。今後被験者数を増やした上で更なる検討を行いたい。
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