2007 Fiscal Year Annual Research Report
制度の維持と変化を司る心理的基盤とその進化的・文化的要因
Project/Area Number |
18530482
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡部 幹 Waseda University, 付置研究所, 准教授 (40241286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 洋紀 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (10332727)
清水 和巳 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (20308133)
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Keywords | ゲーム理論 / サンクション / 協力 / 懲罰 / シグナリング / 社会的ジレンマ / 信頼 |
Research Abstract |
今年度は、社会的ジレンマでの非協力に対するサンクションに関する2つの実験を行い、国内学会で発表した。ひとつの実験は、ジレンマでの非協力者に懲罰行動を行うものに対して、人々がどのように評価するかを調べるものであった。これまでの研究では、集団秩序の維持のために依懲罰行動は必要だが、懲罰行動自体にコストのみがかかるため、懲罰行動が規範として社会に根付くことは理論的には難しいといわれていた。この点に関して、私たちは昨年までの実験で、制度的・理性的な「戒め」としての懲罰と、私的・盛情的な「復讐」としての懲罰を人々が区別していることを発見した。この知見から、今回は「戒め」懲罰を行う人は、「復讐」懲罰を行う人よりも、将来の社会的交換の選ばれやすい、信頼される、などのポジティブな社会的評価を受けやすくなるという可能性を実験により検討した。その結果、大筋では仮説通りの結果が得られ、この知見を国内学会にて発表した。またこれまでの研究の一部を本のチャプターとして執筆した(08年度刊行予定)。 もうひとつの実験として、懲罰行動を引き出す要因としての「裏切り」の種類について検討した。これまでの研究では、自分は相互協力を望むが相手を信頼できないために裏切る場合と、相手を搾取し自らの利益のために裏切る場合があることが指摘されていた。実験は、相手の裏切りが後者であることがはっきりわかるとき、前者の場合よりも、より感情的な怒りが強くなり、結果として(コストはかかるか)懲罰行動が生じやすくなるという可能性を調べるものであった。これについても概ね仮説どおりの結果を得た。そしてこの知見をシグナリングという観点から解釈し学会発表を行った。 さらに昨年度までの脳イメージング研究の結果を国内学会で発表した。そのほか、以上の研究知見を引用、参考として、2冊の図書(うち一冊は1チャプターのみ)を刊行した。
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Research Products
(7 results)