Research Abstract |
P300による虚偽検出は情報検出であり,検査時点で犯行時の記憶を再認できるかどうかが重要である。実務では,犯行から1ヶ月以上経過後の検査が約半数を占めており,長期間経過後の検出可能性を検討する必要がある。そこで,本研究では,模擬窃盗課題から1ヶ月以上経過後に検査を受ける1ヶ月後群,1年以上経過後に検査を受ける1年後群を設けた。さらに,検査直前に模擬窃盗課題を行った部屋の映像を見る犯罪場面群と,大学内の風景を見る大学風景群に分け,記憶の文脈効果から犯罪場面群のP300振幅の増大が認められるかを検討した。特に,模擬窃盗の中心的項目(盗んだ指輪)と周辺的項目(指輪の横にある文具)を裁決刺激とした条件で,P300振幅の違いが認められるかを検討した。 平成18年度は1ヶ月後群のみすべての実験を行い,1年後群は模擬窃盗課題のみを行った。実験参加者の最初の課題は,別室に用意された5段の引き出しの中から1つの貴金属(指輪)を盗み,盗んだ指輪を隠して来るという模擬窃盗課題である。また,指輪の横には文具としてクリップを置いた。P300振幅は,すべての群・条件で標的刺激,裁決刺激,非裁決刺激の順に有意に大きくなったが,群間(犯罪場面・大学風景)の主効果は認められなかった。つまり,映像による事前呈示の有効性は見出せなかった。但し,個別判定では,犯罪場面群の周辺項目で100%の検出率が得られており,映像による事前呈示が,裁決刺激と非裁決刺激の識別性の向上に寄与した可能性がある。平成19年度は,記憶の活性化がさらに必要となる,1年以上経過した群(1ヶ月後群とは異なる群)での検討を行い,映像の事前呈示による促進効果が認められるかどうかを検討していく。なお,本実験は,平成19年9月の日本心理学会で発表する。
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