2006 Fiscal Year Annual Research Report
近世藩学における弓術教育の組織化と業績主義的運用の定着過程に関する研究
Project/Area Number |
18530624
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
佐藤 環 常磐大学, 人間科学部, 助教授 (50280136)
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Keywords | 藩学 / 武芸 / 弓術 / 業績主義 / 弘前藩 / 稽古館 / 日置流 |
Research Abstract |
本研究は,近世藩学における弓術教育の組織化とその進展に伴う業績主義的運用実態に関する史的研究であり,主要な藩学における弓術教育の組織化と業績主義に基づいた学修評価法について,(1)業績主義的学修評価法の創設,(2)藩学における武士階層と学修評価規定の適用範囲,(3)業績主義的学修評価規定の運用状況,を軸としてその定着実態を明らかにしようとする。2006年度は,弘前藩学稽古館における弓術教育の組織化について調査を行った。弘前藩を取りあげた主たる理由は,藩主津軽氏が「旧族居付大名」に分類され,中世以来の柵が濃い家臣団に対して業績主義的な学修評価受容の可能性を知るための好例だからである。 弘前藩における弓術教育の組織化は次のような歴史的変遷を辿った。第1段階:18世紀前半,弘前藩の弓術振興のため藩外から弓術の名手を弓術師範として登用し藩士への教導を任せた業績主義の時期。第2段階:18世紀中葉,個人の業前を重視する業績主義から,血脈を重視する師範「家」の人間から師範を任ずる傾向が見られ,由緒ある血統ではあるが実力は芳しくない師範が出現することとなる。武芸省令布達がしばしば出されるのは,軍制を「量」から「質」に転換しようとしていた藩府がこのような事態を重大視したことによる。第3段階:1796年に藩学稽古館を開館させ,藩士の武芸水準の維持・向上を公的に管理運営しようとした。開館当初,弓術教育を担ったのは18世紀初頭から伝統・実績・人脈を有した竹林派と日置流であり,通し矢競技で全国的な評価を得ていた後発流派の石堂竹林派藤家一流は武芸場の拡張がなされた1798年に師範掛に任ぜられた。第4段階:1799年に稽古館から武芸教育が切り離され,稽古館開館以前の師範宅道場で修業する形態に戻ってしまった。藩府による武芸の業前を公的に管理することを撤回してしまった。
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