2006 Fiscal Year Annual Research Report
幕末維新期来日外国人の平田国学研究にみる教育の近代化
Project/Area Number |
18530625
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
熊澤 恵里子 東京農業大学, 教職・学術情報過程, 助教授 (90328542)
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Keywords | 教育学 / 思想史 / 哲学 / 民俗学 / アーネスト・サトウ / 平田国学 / 幕末維新期 / 教育の近代化 |
Research Abstract |
本研究は、幕末維新期に来日した外国人が平田篤胤の著書を収集し研究を行うとともに、日本における「教育の近代化」について言及している事実に着目し、彼等が平田国学研究に至った経緯とその研究方法および内容、成果について歴史的、思想的にその実態を明らかにすることを目的としたものであり、平成18年度はケンブリッジ大学アーネスト・サトウの関係史料を中心にして、史料収集と目録作成(データベース、写真撮影)を実施した。またケンブリッジでの調査と並行して、国立公文書館所蔵のアーネスト・サトウ日記とサトウ関係書簡を閲覧・撮影する作業も行った。 ケンブリッジ大学図書館では、アストン・サトウ・コレクションにあるサトウの直筆史料を閲覧し非常に有意義な結果を得た。蔵書目録からサトウの勉学ノートを中心に閲覧した結果、サトウが「国史略」「孟子」などの漢籍を理解し、修得したことを確認した。日本語の修得は漢籍の知識により容易であり、言葉だけでなく、文章および風俗文化も深く理解し、平田国学研究の前提となった日本語・日本学研究を系統的に学習している。また、サトウに日本人の家庭教師がいたことは周知であるが日記などの分析により、一人の教師ではなく、複数の、しかもそれぞれ専門分野においてサトウの疑問に答えられるような日本人の知人がいたことが判明した。特に幕府や諸藩の人材との交流が、すなわち、サトウの知識の源にもなっていたことが明らかとなった。その意味では、サトウは非常に合理的に日本研究に取り組んだことになる。 ケンブリッジでの史料を補完するものとして、国立公文書館におけるサトウ日記とサトウ関係書簡がある。特にサトウ関係書簡からは、明治10年代後半以後、サトウの平田国学研究熱は突然さめてしまった理由が判明する。サトウは、長年の日本研究を深化させていくなかで、日本のルーツが朝鮮の言語にあるという確信を持ったことが上げられる。それ以後、サトウは朝鮮の言語研究に夢中になり、平田国学研究からも遠ざかってしまうのである。史料調査は次年度に継続する。
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Research Products
(2 results)