2007 Fiscal Year Annual Research Report
世界遺産熊野地域の言語表現の豊かさの解明と教材開発
Project/Area Number |
18530696
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
伊藤 隆司 Ritsumeikan University, 産業社会学部, 教授 (50159886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹保 健一 三重大学, 教育学部, 教授 (40115712)
余 健 三重大学, 教育学部, 准教授 (90345968)
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Keywords | 熊野 / 方言調査 / 学校文集 / 言葉の豊かさ / 世界遺産 / 総合的な学習の時間 / 作文 |
Research Abstract |
(1)熊野地域の作文教育関連資料について、三重県北牟婁郡、熊野市、和歌山県新宮市、本宮町周辺地域の文集の収集と整理を進めた。とりわけ、熊野市立飛鳥小学校地域を重点区に設定し、1960年代に編集・発行された学校文集『杉の子』の収集・分析を行った。文集に掲載された詩や作文について、生活・あそび・家族関係・仲間関係などの特質解明にあたった。また、同校周辺地域の自然的社会的歴史的動向に関する資料収集と整理を進めた。詩や作文を用いたカリキュラム、授業展開の構想に着手した。(2)熊野地域における言語表現の特質解明にあたって、8月と9月に熊野市飛鳥町にて、高年層18名を対象に方言調査を行った。全体的に古代や中世の古態が反映されている方言が残存している側面と消失、単純化している側面とを確認できた。前者の側面には、音声における前鼻音や鼻音、語彙が相当し、後者の側面には、アクセントの1拍名詞やアスペクト形式の「ヨル」の軽卑化・文法化が相当する。特に、前者の語彙における「タバル」(「賜る」を語源と考えられる)は、11世紀初頭に使用されていた記述が残っており、且つ現代の若年層にも脈々と受け継がれていて興味深い。「コワイ」を共通語的な恐怖感の意味を表すだけでなく、「疲れた」の意味でも使用できたり、「オドロク」を「びっくりする」の意味に加えて、「目がさめる」の意味でも使用できたりする人も確認でき、いずれも古態としての方言が残存している例として確認できた。今後後者の古態が単純化された側面と合わせて、それらの背景にある要因を考察し、総合的な学習の時間等における熊野の方言の教材化を試みたい。
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