2006 Fiscal Year Annual Research Report
3次元双曲多様体における岩澤予想とその数論への応用
Project/Area Number |
18540203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
杉山 健一 千葉大学, 理学部, 助教授 (90206441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久我 健一 千葉大学, 理学部, 教授 (30186374)
高木 亮一 千葉大学, 理学部, 教授 (00015562)
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Keywords | 多様体のゼータ関数 / 岩澤予想 / 3次元双曲多様体 / Alexander不変量 / Ruelle L関数とその特殊値 / Milnor-Reidemeister普遍量 / Selbergの跡公式 |
Research Abstract |
本研究の目的は,整数論における岩澤予想に対応する予想を,体積が有限の3次元双曲多様体について考察しようというものである。具体的には, (1)コンパクトな3次元双曲多様体上に与えられた局所系から得られるAlexander不変量のゼロ点の位数とRuelle L関数のゼロ点の位数とを比較する。また,その主要項を比べ,どれだけずれるかを調べる。 (2)(1)で述べた主要項の幾何学的な意味を考察する。 (3)(1)の考察を,体積が有限な3次元双曲多様体上の1次元局所系についてもおこなう。 (4)以上により得られた結果を整数論に応用する。 である。本年度では,特に(1)と(2)に焦点を絞って研究を行い,満足いく結果が得られた。得られた結果は次のようになる: (1)コンパクトな3次元双曲多様体上に与えられた局所系から得られるAlexander不変量のゼロ点の位数とRuelle L関数のゼロ点の位数は等しい。また,主要項については,多様体がmapping torusの場合はそれらは一致するが,一般には一致しない。(しかしながら,そのずれを具体的に計算することができる。) (2)Alexander不変量の主要項は,Milnor-Reidemeister普遍量と言われる,古くから知られている幾何学的不変量と一致することが示された。したがって(1)と併せると,Ruelle L関数の特殊値はほとんどMilnor-Reidemeister普遍量に等しいことがわかる。 (3)体積が有限の3次元双曲多様体上の1次元局所系についても,(1)と同様の結果が得られた。しかも,局所系がカスプの近くで自明の場合は,Alexander不変量のゼロ点の位数とRuelle L関数のゼロ点の位数は一致しないこともわかった。これは整数論において,有理数体上定義された楕円曲線が,ある素数pで分裂乗法的還元を持つ場合は,岩澤多項式とp進L関数のゼロ点の位数がずれることと対応している。 このように,3次元双曲多様体についての岩澤理論の類似は,その病的なところまでこめて,整数論のそれと同じように成立することが,今年度の研究により明らかになった。このことは,整数論のおけるゼータ関数と3次元双曲幾何学におけるそれとは,単なる類似ではなく本質的なところで同じ性質を持つことを示唆し,本研究の整数論への応用におおきなはずみとなる。
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