Research Abstract |
本研究では,非コンパクトな,体積が有限の3次元双曲多様体上のユニタリー局所系にたいして定義される,Ruelle L-関数の性質を明らかにした。より正確には,無限遠において局所系が尖点的である,という条件を課して,ほぼ満足する結果が得られた。この条件のもとでは,ラプラシアンが連続スペクトラムを持たないため,2乗可積分な空間のラプラシアンによるスペクトラル分解が容易に記述できて,Selberg跡公式の計算も具体的に実行可能である。(つまり明示公式が得られる。)特に,個々の軌道積分が具体的にわかるためSelberg跡公式から多くの情報か得られる。まず,Ruelle L-関数が関数等式をもつことがわかり,またRiemann予想に相当する零点や極の位置がわかる。また,原点は関数等式の折り返し点となるが,そこでの零点あるいは極の幾何学的な意味付けができる。実際には,局所系のコホモロジーの次元の重みつき交対和で表され,これは数論幾何学におけるBirchとSwinnerton-Dyerによる予想と符合する。さらに,Ruelle L-関数を原点ローラン展開したときの係数の意味づけもできた。まず,第1項は幾何学的トポロジーにおいて重要なFranz-Reidemeister捻りと局所系の周期積分の積となることがわかった。これにより,3次元双曲多様体においては,BirchとSwinnerton-Dyerによる予想に相当する事実が成立することがわかる。さらに,面白いのは第2項で,多様体の体積(より正確にはその定数倍)が現れる。実は,Franz-Reidemeister捻りも体積も,代数的K群とBorel regulatorを用いて述べることができるので,整数論におけるLichtenbaum予想に相当する事実が成立することが分かった。
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