Research Abstract |
研究代表者四ツ谷晶二の主な研究成果について説明する. まず,小杉・森田との共同研究成果について説明する.非局所非線形境界値問題Chan-Hilliard equationの空間1次元定常解の全体構造を解明した.従来,間接的に解の全体構造を示唆するすぐれた結果が知られていたが,完全解明には至っていなかった.龍谷大学PD小杉聡博士と森田善久教授と共同で,楕円関数を用いてすべての解を表示し,解の構造を決定する問題を完全楕円積分を含む連立超越方程式に帰着しその解構造を完全に解明した. 連立超越方程式に帰着されることおよびその解析いずれも従来の手法とは全く別な独創的なものであり,論文投稿先のDiscrete Conti.Dynam.Systemsの査読者から,驚嘆すべき明解さとシャープさをもった極めて質の高い論文であるとの評価を受けている.アーベル,ヤコビが創始した古典的な楕円関数論と,ここ数年で急速な進展を遂げた数式処理と計算代数の有機的な組み合わせをもって初めて解決できた画期的結果であり,今後,この方向の研究のパイオニア的な仕事となると確信している.なお,発見には数式処理を用いたが,証明はすべて手計算による厳密なものである. 次に,若狭との共同研究成果について説明する.反応拡散方程式の定常解のまわりでの線形化固有値問題の固有値を決定する超越方程式,および,固有関数を表示する方法を発見し,その超越方程式の解析法を示したものである.古典的なSturm-Liouville理論で固有値・固有関数の存在は保証されているが,固有値を決定する簡潔な方程式があるかどうか,固有関数の簡潔な表示式があるかどうかは,根源的かつ重要な長年の未解決問題であった. 早稲田大学大学院博士課程院生の若狭徹氏と共同研究で,これらのことに肯定的に答えるため,全く新たな手法を発見し,具体的にChafee-Infante問題に対し有効性を示した.さらに,拡散係数を零に近づけたときの,固有値分布や固有関数の形状について精密な漸近表示を得た.今回発見した手法は,線形化固有値問題の固有値問題のみならず古典的Sturm-Liouvine理論のそのものに新たな見方を与えることになっている. さらに,固有値を決定する超越方程式の解析の過程で,完全楕円積分の取り扱いにおいて,いくつかの新しい知見を得た.最も難しいのは第3種完全楕円積分の取り扱いであるが,母数が1に近づく場合の,本質を取り出した近似公式を見いだし固有関数の漸近形の解析に応用した.この論文で発見された近似公式は,将来,全く無関係ないろんな問題においても大変有用なものとなることが期待される.
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