2008 Fiscal Year Annual Research Report
弦の場の理論とループ方程式による弦理論とゲージ理論の双対関係の探究
Project/Area Number |
18540266
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
畑 浩之 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授 (70164837)
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Keywords | 超弦理論 / AdS / CFT対応 / ループ方程式 / ホログラフィックQCD / Skyrmion / ソリトン / Chern-Simons項 / バリオン |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、酒井・杉本によって提唱された「ホログラフィックQCD模型」におけるバリオンの解析を行った。酒井・杉本模型は、超弦理論において10次元時空上にD4/D8/反D8の3種類のDブレインを配置することで4次元時空上のQCDを再現したものである。この模型をD4ブレイン上の理論として見るとQCDの基本場であるクォークやグルーオンを持った理論となっているが、他方、D8ブレイン上の理論として見るとメソン場から成るQCDの低エネルギー有効理論を与えており、現実世界を数値的にもかなり良い精度で再現することが知られている。酒井・杉本模型においてバリオンはソリトンとしてあらわされることが以前、畑・酒井・杉本・山戸らにより明らかにされたが、本研究課題では、このバリオンに関する研究として、電荷分布・磁気モーメント・axial vector coupling等の静的な諸性質の解析を行った。この解析における最も重要な点は、酒井・杉本模型において4次元の意味でのフレーバーの左右カレントを如何に定義するか、である。我々は、ある種の局所ゲージ変換のNoether currentの積分として与えたカレントを用いて解析を行い、実験値とかなり良い一致を得た。この成果は、村田仁樹氏および山戸慎一郎氏(共に博士後期課程大学院生)との共著論文としてPhysical Review D誌に発表された。なお、我々の用いたカレントにはゲージ不変性に関する問題が残されていたが、その後、橋本・酒井・杉本により、この問題を克服した別のカレントを用いた解析が行われ、我々と多くの共通点のある結果が導かれた。我々のカレントによる解析を正当化する議論を現在展開しており、近いうちにその成果を発表できるものと思われる。
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