Research Abstract |
研究最終年度にふさわしく,本年度は研究に大きな進展があった.それは,クォーク・レプトンの質量行列の新しい処方として,「ユカワオン模型」なるものを確立したことである.部分的にはすでに前年度あたりから試みられていたアイディアであるが,2008年の春頃から定式化が進み,後述するニュートリノ質量行列の新しい形態の発見により,ほぼそのスタイルは確立した.(「ユカワオン」の名称は,2008年11月ころより使われた.)従来,質量の起源はヒグス粒子に,質量スペクトルの起源は湯川結合定数の構造に,それぞれ求められていた.それを越えるモデルとして,私を含めて質量行列模型の研究者は,例えば離散対称性のもとで複数のヒグスを導入することにより,その真空期待値(VEV)と湯川結合定数の積の構造から質量スペクトルを説明することを試みてきた.ユカワオン模型では,質量の起源は従来と同じとしてそれをヒグス粒子に役割を負わせるが,質量スペクトルの起源は,湯川結合定数の部分がそっくり新しい場「ユカワオン」のVEVに由来すると考える.従来は,湯川結合定数は手で与えたパラメターに過ぎなく,あるいは,対称性を仮定して,制限を置いた上でのフリーパラメターであったが,ユカワオン模型では,超対称性理論のもとで与えられたスーパーポテンシャルに超対称性真空条件を課すことにより得られる方程式を解くことにより,質量スペクトルやフレーバー混合が求まる.[YK, Phys. Rev. D78(2008),093006;YK, Phys. Rev.D79(2009),037302;YK, arKiv;0902.4501(2009).]その定式化を与えるきっかけとなったのが,ニュートリノ質量行列をクォーク.セクターでの観測量に結びつけて記述するる新しい行列形の発見[YK, J. Phys. G35(2008),125004;YK, Phys. Lett. B665(2008),227]である.
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